風よ伝えて(爺さんのブラジル移住)第189段

父の日

 ブラジルでは、8月の第2週の日曜日が「父の日」である。

 マチダ家には、お父さんの兄弟の「おばあさんネネ」のトシコさん達を招待した。

 父の日に先祖のお墓参りをする家庭が多い。

 マチダ家も、テテがお母さんを車に乗せ、おばさんちまで、おばさん2人を迎えに行き、その足でお墓参りに出かけた。

 その間に、私と伯は、「焼鳥」を焼くことにした。

 前々から、家族の皆が、日本の味の「焼鳥」を食べてみたいと言っていたので、材料を用意していた。

 ブラジルでは、シュハスコをする機会が多いので、炭、焼串(竹製)は、何時もスーパーマーケットで売られている。

 「焼鳥のたれ」は、私がインターネットで探したレシピを使った。

 濃口醤油、みりん、酒、砂糖、とりがらスープの素等を入れて、少し「とろみ」が出るまで煮て、すでに昨日作っておいた。

 鶏肉も細かく切り、伯と2人で串に刺しておいた。

 串は、60本作った。

 だから、今日は、炭をおこし、焼くだけでよい。

 お母さんは、焼饅頭、ミドリは得意のケーキを作った。

 キヨカズが、マチダ家に来る途中で、ビールを買ってくることになっていた。

 庭に、コンロを置き、炭をおこした。

 さあ、焼き始めるぜ!

 私は、エプロンをし、網の上に、串を並べた。

 順調であった。

 焼けた串から順に、「たれ」の入った瓶にどっぷりとつけた。

 そしてまた、網に乗せた。

 いい匂いであった。

 じっくりと、火加減に注意しながら、焼いていった。

 焼き上がった串を、トレイに並べていった。

 「さあ、食べよう!」と思っても、キヨカズがまだ、来ていない。

 「・・・・・ビールがないじゃん・・・!」

 早く来ればよいのに・・・。

 30分くらい経ったが、まだ来ない。

 「食べようか・・・。」

 食べはじめたのであった。

 私は、「キヨカズ・・・何やってんだ、早く来い!」と、心の中で叫びながら、焼鳥を食べた。

 なんだか、物足りない。

 そして、「たれ」の味も、甘ったるく、こちらも少し、物足りない。

 女性向きのレシピのようであった。

 おばさん達との会話も弾み、「焼鳥」を焼きながら、昼食をも食べてしまった。

 キヨカズは、まだ来ない。

 もう、お腹は満腹になった。

 お腹の皮が張ってくれば、瞼が下がってくる。

 そして、やっとのことで、キヨカズが到着した。

 「はい、ビール。」

 「オブリガード。」

 私は、ビールを飲み始めたが、もう、「焼鳥」を食べたい気持ちはなくなっていた。

 1本の缶ビール。

 飲み終えると、やってきたのは、睡魔であった。

 こっそりと、場を抜け出し、2階の部屋に行き、寝てしまった。

 お父さんは、80歳になられる。

 歩行時には、杖が必要である。

 夕方、車を運転し、バーに行くことは、毎日続いている。

 運転、気を付けてください。

 お父さんの血液検査の結果は、私のそれより良い数値が多い。

 まだまだ、元気で頑張って欲しいと思う。

       焼鳥の こうばしき香 立ちこめる

           されどまだ来ぬ 冷えたビール

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