風よ伝えて(爺さんのブラジル移住)第175段

マナカが咲き始めた

 6月も、もうすぐ終わる。

 秋が過ぎ、冬になった。

 グラルーリョスは6月に入り、10℃を下回る日があったが、この2週間程は、ポカポカ陽気であった。

 ワールドカップで、ブラジルの成績が良く、お日さんも浮かれているようだ。

 サビアが囀り、桑の木は、緑の実を付け始め、薔薇の樹は、淡いエンジ色の若葉を出し始めた。

 春の準備をしているようだ。

 マナカが、可憐に咲き始めた。

マナカがこの庭に来て、もう、1年近く経った。

 3本が枯れてしまったが、残った3本で、今年も、庭を賑やかにしておくれ。

 マナカの花を見ると、花の色が似ているのか、日本の「桜」を思い出す。

 そして、毎年、おふくろと桜の花見に出かけた事が、思い出される。

 おふくろの口癖、「もう、みおさめね。」

 毎年、毎年言っていた。

 「まだ、来年も、見れるよ。」

 100歳になったおふくろは、桜の木の下で、車椅子に座り、はらはらと散ってくる桜の花びらを手のひらで受け止めようとし、ゆっくりと眺めていた。

 この年が、おふくろの最期の花見であった。

 私は、ブラジルのこの庭で、毎年、マナカが咲くのを見続けることだろう。

 「また、今年も、マナカと会えた。」

 いつまでも、そういう年が来るように・・・。

 「もう、みおさめね。」は、まだまだ、先の、そのまた先でありたい。

 元気で、大きくなってくれ。

 おふくろの面影が・・・。

 太陽が輝き、爽やかに風が庭を撫でていく。

 その中に、私はいる。

 

     春を待つ 庭の樹々達 目を覚まし

           点描画になる 庭の新芽が

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