風よ伝えて(爺さんのブラジル移住)第172段

まだまだ、続けよう

 朝7時、朝霧の中、草取りである。

 サビアが囀る季節になってきたようだ。

 美しい清んだ鳴声である。

 太陽が昇り始め、9時頃にはマチダ家の庭を照らしはじめる。

 空は高く、青空には、綿雲がところどころに散りばめている。

 この時間になると、「ピヨ、ピヨ」と可憐な囀りが聞こえる。

何処かぎこちない鳴き方である。

 きっと、まだデビュー前のサビアの幼い歌姫が囀っているのだ。

 

 桑の木の先端は、サビアが休む場所なのだが、何故か「破れ凧」が引っかかっている。

 この時期、グラリルーリョスでは、さかんに凧揚げをして遊ぶ。

 凧はトンビが飛ぶと同じくらい高く揚げる。

 そして、近くに揚がっている凧をめがけ、「戦」を仕掛ける。

 「喧嘩凧」である。

 戦に敗れた兵凧が、マチダ家の庭に墜落しているの見ることがある。

 さて、1本、1本丁寧に草取りをして来た。

 今日、6月7日は、昨年、ブラジルに来て始めた「草むしり」が終わった日である。

 丁度、1年が経った。

 1年間、草取りを続けた。

 「ジャングル庭」であったが、だんだんと庭らしくなってきている。

 桑の樹の傍の瓦礫置場は、「草むしり」をしただけで、夏草が伸び、そのままになっている。

 今は、手を入れる時間がない。

 最後に、そして、一気に片付けてしまう予定である.

 幾度か「草取り追試」をした場所は、漸近線宜しく、一色になりつつある。

 黒玉、白玉、黒玉インベーダーの「球根三羽烏」は、殆どなくなっている。

 地表に近い球根はなく、地中の深くに潜んでいる球根を掘り起こしている。

 刃の部分が10センチあるネジリ鎌で地中深く降り起こしても、球根に届かずに根の途中で切れてしまう物がある。

それでも、もう1度、掘り起こした場所をもっと深くネジリ鎌で掘り起こす。

 やっと、球根が取ることが出来る。

 その時の気持は、昔、「セーラー服と機関銃」の映画の中で、やくざの組長の女子高生が、組事務所に殴り込み、機関銃を無造作に乱射した後、放心状態になり、其の後で発した言葉、「快感!」。

 全く、同じ気持、「快感!」。

 「球根三羽烏」が少なくなっているのは、冬に向かっていることもあるかも知れない。

 暑くなってくると、また、出てくるかもしれない。

 要注意、要注意。

 1本、1本丁寧な作業を続けなければならない。

 無くなるまで・・・。

 されど、これが「気の遠くなるような作業」と思われない。

 雑草が少しずつ減っていき、「草取り追試」をしなくて良いように、変わっていく庭を見るのが楽しい。

 「爺さん、1本、1本雑草を取っているが、50年前、この調子で英単語を覚えていたなら、卒業試験の赤点は無かったろうに・・・。

 爺さん、今頃気が付いても、遅いんです!

 爺さんの『おバカさん』。

 この『おバカさん』は、ポルトガル語も憶えようとしないのですねえ・・・。」

 まだまだ、続く・・・。

 「草取り追試」が無くなるのは、何時のことやら・・・。

        サビア鳴く 朝霧の中 草を取る

              思い返すは 去年の今日

合戦で、糸を切られ敗北した凧が、庭の竹に引っかかり、宙吊りになっている。

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