風よ伝えて(爺さんのブラジル移住)第160段

柿とイぺー

 秋が深まってきて、樹々の葉の色が少しずつ濃くなってきている。

 かといって、暑さが過ぎ去った訳ではない。紅葉は無く、さほど夏の風景と変わりがない。

 スーパーマッケットで、私の好きな柿を売り始めた。

 買って食べてみたら、日本の柿と同じ味で、めっぽう甘かった。

 「富有柿」であった。

 移民の時に、日本から持ってきて、育てたのであろう。

 でも、私の住む町や、グラルーリョスに行くバスの車窓からは、たわわに実った柿の木を見ることはできなかった。

 何処か、町から離れた田園地帯で作られているのであろう。

 私が刈谷市に住んでいた時に、息子の大学入学を記念して、庭に「次郎柿」の苗を1本植えた。

 植木屋に行き、2メートルほどで柿の実の付いた苗を見つけた。

 「買ってくれるなら、柿をもいでも良い。」と植木屋が言ったので、買う約束をし、柿の実を1つもいでその場で食べた想い出がある。

 その柿は、甘く美味かった。

 持ち帰り、庭に植えた。

 翌年の春に花を咲かせ、小さな実ができて、実が大きくなるのを楽しみにした。

 しかし、全て実は小さなままで、落ちてしまった。

 消毒をしたが、駄目であった。

 翌年、そしてまたその次の年も・・・。

 6年間、八王子でアパートを借りていた息子には、1つの柿も送ってやることが出来なかった。

 こんな事を思い出しながら、たわわに実を付け、赤くなっていく葉が必死に樹にしがみついている光景の向こうに、美しい日本の里山の秋が見える。

 懐かしい光景になってしまった。

 そして、マチダ家の秋である。

 玄関の隣の庭の隅に10メートルを超す高さの樹が1本植わっている。

 「イペー ホーザ(IPE ROZA)」の樹である。

 「ノウゼンカズラ科」のラッパ状の花で、細い枝の先端に10個ほどの花が放射状に集まって咲く。

 3月中旬から、少しづつ葉を落とし始め、蕾が開いていく。

 ピンクの花が咲くにつれて、どんどん葉が散っていく。

 その葉は、枯葉でなく、まだ緑色を残している。

 花が満開になる頃には、全ての葉が落ちてしまう。

 葉の無い花だけに樹に変身する。

 その姿は、桜が花だけを付け咲き誇る姿に似ていて、「ブラジルの桜」と言われている。

 沢山の花を付けたイペーを見上げると、仄かに日本の「春欄満」の桜が見える。

 今、マチダ家の庭は、「秋欄満」である。

 「イペー」には、マチダ家の庭に咲くピンクの花を付ける樹の他に、黄色、紫色、白色の花を付ける種類がある。

 黄色の「イペー アマレラ」は、「ブラジルの国花」になっている。

 ピンクは秋に咲くが、黄色は春から夏にかけて咲く。

 今、草取りをしている庭に、いつの日かにか黄色のイペーを1本植えようと思っている。

 マチダ家の秋は、このピンクのイペーが大将のようである。

 そのラッパ状の花達が、「DAIKITTYの鯛焼はおいしいよ・・・。」なんて、街中聞こえる大声で宣伝している・・・な ん て・・・。

  

       ブラジルの イペーの花の 衣替え

              春は黄色と 秋はピンクに

花曇りの日、満開になった庭のイペーを見上げる。

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