風よ伝えて(爺さんのブラジル移住)第150段

番犬の死

 マチダ家の五匹の番犬の1匹である「ピッチ」が死んだ。

 ピッチはスコチッシュテリアの血が混ざった雑種であった。

 10歳、黒の雌。

 5匹のうちで、吠えた事がないくらいにおとなしかった。

 1週間前から食欲がなく、何も食べなくなった。

 マチダ家から2キロほど離れているところに、24時間営業の動物病院があり、夜遅くテテの運転でお母さんと伯がピッチを連れて動物病院に診察を受けに行った。

 1日入院であった。

 翌日の夕方、伯の運転でお母さんと私とでピッチを迎えに動物病院に行った。

 ネズミの尿から感染する病気らしかった。

 もう1日入院とのことで、その日は連れて帰ることが出来なかった。

 再度、そのまた翌日に迎えに行った。

 連れて帰ることが出来た。

 でも、まだ、元気がない。

 帰りは、私の運転で帰った。

 丁度、その日に免許証を貰うことが出来ので、運転をしてみた。

 

 帰宅し、ピッチだけ他の犬達と隔離した。

 翌日、私と伯とで、グラルーリョスにある大きなペットショップへ行き、飲み薬と点滴用の薬と点滴用品一式を購入した。

 帰宅し、伯が動物病院で教えてもらったとおり、点滴をした。

 ピッチは、声も出さずに、ぐったりとして、静かに点滴されていた。

 数日、点滴が続いた。

 1度だけ、よろよろと元気なく、庭を歩く姿を見ただけで、ピッチは、ぐったりしていた。

 日曜日、リベルダージのブンカマツリの朝、伯は、ピッチに点滴をセットし、リベルダージに出かけた。

 リベルダージで鯛焼を売っていた午後3時頃、ミユキにお母さんから電話があり、ピッチが死んだことを知らされた。

 ミユキと伯は、寂しそうな顔をして、ピッチの事を話し始めたが、お客がつき、気を取り直し、鯛焼売りに戻った。

 リベルダージが終わり、帰宅した。

その前に、ピッチは庭に埋葬されていた。

 伯とミドリは、埋葬された場所に行き、十字を切り、お祈りしていた。

 

庭には、六匹目の番犬のプードルも埋葬されている。

 マチダ家は、そうしている。

 

ブラジルでは、人の死も土葬が多く、最近になって火葬もされるようになっているようだ。

 まだ、動物については、火葬されるような風習ではないようだ。

 私が刈谷市に住んでいて、私の息子がまだ小学校3年生の時に、息子が友達の家で犬が生まれたということで、子犬を1匹貰ってきたことがあった。

 柴犬で、息子は名前をジョンと付けた。

 ジョンは、マチダ家の犬とは違い、庭に繋がれ、散歩に連れて行って欲しいと、「わんわん」泣いていた事を思い出す。

 フィラリアに感染し、1週間の入院をしたことがあったが、その後、回復し、元気にお爺さんになった。

 長寿であった。

 ある日、食べなくなり、元気もなく、グテッとしてしまい、2日ほどで、逝ってしまった。

 老衰であった。

 大学2年になった息子が、八王子からバイクで東名高速を走り、急いで帰ってきた。

 私の出社後に家に着いたので、息子とは会うことが出来なかったが、涙を流していたようであった。

 息子は、ジョンを連れて、火葬場に行き、別れをした。

 

 私は、ジョンが繋がれ、前足で穴を掘ったりしていた、2メートル四方の場所に小さな白い花が咲くタピアンを植え、遊び場を花でいっぱいにして供養をした。

 私は今、マチダ家の庭の草取りをしている。

 庭を作るに、犬達が葬られている場所を、いっぱいの花で飾ってやろうと思っている。

 

 「ピッチよ、安らかに・・・。」

       吠えもせず 優しさ溢る 黒毛のピッチ

               今我が手にぞ 残るぬくもり

     

ピッチよ安らかに。

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