風よ伝えて(爺さんのブラジル移住)第142段

初陣

 3月15日、土曜日。

朝7時、テテの運転で、伯とミユキ、そして車のトランクには、鯛焼、ミニパンダ焼を乗せ、真赤なフィットは、爽やかに晴れた空の下、マチダ家を出発した。

 鯛焼、パンダ焼のバザールへの初陣であった。

 私は、マチダ家に留まる事となった。

 売れ行きを見て、電話連絡をしてもらい、鯛焼が不足するようであれば、焼き方開始をするためであった。

 フィットを見送り、私は、草取りを開始した。

 11時。

 まだ、連絡がない。

 11時半、ジンタがネネを連れて、バザールに出かける時になってしまった。

 連絡がない。

 ジンタにミユキのところに電話連絡してもらったが、ミユキは電話に出ない。

 現地の状況は、全くつかめない。

 「きっと、あまり売れていない。」と思った。

 急遽、ジンタと一緒にバザールに行くことにした。

 

 現地到着。

 フロントロビーには、主催者である婦人会が、テンプラ、ギョウザ、焼肉等の食べ物の店を出していた。

 そこを通り過ぎ、会場に入ると、50店舗ほどの出店が、ぎっしりと並んでいた。

 1店舗は、幅1メートルのテーブルが商品を並べるスペースであった。

 が、壁側に7メートルほどのスペースを取っている店があった。

 ここで、主催者の婦人会が、「ドラ焼」を焼きながら、販売していた。

 私にとっては、「えらいこっちゃ」であった。

 私たちの出店では、火を使い、焼くことは出来ない。

 それに、婦人会の売値は安い。

 私たちが売る「スポンジケーキ」風の生地に仕立てた鯛焼は、1個、2ヘアウの売値に設定してあった。

 出店する1週間前までは、3ヘアウで勝負する予定であったが、お母さんとミユキが、グラルーリョスの隣町のアルジャの市に出かけ、そこで売られていたどら焼が1個2ヘアウということであった。

 私たちの鯛焼も、皆との相談で、2へアウにすることにしたのであった。

 それが、この場になって、婦人会の売値は、1個1.5ヘアウであった。

 出店する前は、「このような場所では、来場客は少し高くても買う。」と聞いていた。

 この言葉は、こうしたバザールでは通用しないと感じた。

 リベルダージとか、フェスティバルで、人が沢山集まる場所では、通用する話と、考え方をかえた。

 それでも、鯛焼1個、2ヘアウは、変えずに販売した。

 私は、会場を何べんも見て回った。

 どの店も、暇にようだった。

 どの店も、売れていなかった。

 売れていたのは、アイスクリームの店で、数人の列が出来ていた。

 伯とミユキのいる場所に戻り、様子を見た。

 あちらこちらの店の人は、暇にまかせ、ゲームをしたり、隣とおしゃべりしたりしていた。

 それもそのはず、客が余りにも、少なすぎる。

 私の店の前を通る客が、数分間、1人も通らない時があった。

 昨年の7月の七夕祭りに出店した時は、店の前は歩くことが出来ないくらいに混雑していた。

 見渡しても、会場には、客より、売子の人数の方が多い。

 鯛焼は、予定していた数より売れていなかった。

 それでも、鯛焼はぱらぱら売れていた。

 客の中で、ミニパンダを見て、「これ、ケシゴム?」と着てきた客、鯛焼を見て、「これ、どのようにして、遊ぶの?」と聞いてきたり、食べ物でないと思って見ている客もあった。

 それは、今迄に見たことがない物が、食べ物であると一目で判る陳列方法を、取っていなかったと、反省する材料となった。

 売り方は、1個、1個ビニールの袋に入れ、化粧箱の中に、ランダムに入れてあるだけであった。

 そのため、消しゴム、おもちゃと見間違えられても仕方のない陳列、販売方法であった。

 

 ジンタとネネには、先に帰ってもらい、私は会場に残り、最後まで様子を見ることにした。

 私たちの店の隣で店を出していた化粧品を売っていた人と伯が話をした。

 化粧品屋は、毎年出店しているとのことだった。

 今年は、例年に比べ、客が少なく、売上も少ないとのこと。

 不景気か・・・。

 

 6時になり、閉店となった。

 明日は、日曜日、客は、増えるということのようだった。

 テテが迎えに来て、伯とミユキと4人で帰宅。

 帰宅の車の中で、2つの問題が話題になった。

 その2つは、売値と売り方であった。

 車の中で、明日のため、話合った。

 売値・・・・・1.5ヘアウに下げてみよう。

 売り方・・・・パックでの商品を作ってみよう・・・・鯛焼5個入り・・・・ミニパンダ焼6個入り。

 帰宅後、伯とミユキは、パック製品を作り、私は、値段表に値段を入力し直し、プリントアウトした。

 長椅子に座り、各々が感じた事を話あった。

 まだ、鯛焼、パンダ焼は、あまり知られていない。

 「消しゴム」「おもちゃ」

 珍しそうに、見ていくが、通り過ぎて行ってしまっている。

 「日本から、持ってきた、鯛焼、パンダ焼です。」とアピールしても、読んで貰うだけで、買ってももらえなかった。

 それなら、「おいしい、あんこ、カスタード」とアピールした方がいいのでは・・・。

 夜の10時を回っていた。

 1つ、1つ、1歩、1歩、前進していこう!

 明日は、一1、登ることができるか?

        並べたり 売るは食べ物 判る様

              明日に向けて 素直に変更

鯛焼、パンダ焼の初陣の様子。


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