風よ伝えて(爺さんのブラジル移住)第140段

吾輩は「ハル」である

 俺は、5ヶ月前にマチダ家に拾われてきた、4匹目の猫の「ハル」である。

 毎日が楽しくて、忙しくてしょうがない。

 食事は、何時でも皿に入っているから、好きな時に食べられる。

 ここに拾われてきた時は、ネネに抱きかかえられ、遊んでもらったが、もう、ネネは俺が重すぎて、俺を抱きかかえることが出来なくなっている。

 独眼竜のミケは、俺のお母さん代わりになり、じゃれあったりして俺を育ててくれたが、今は俺より小さいではないか。

 この頃は、じゃれ合って欲しいが、俺が向かっていくと、逃げてしまう。

 駆けっこになってしまう。

 でも、部屋中、ベランダ中、追いかけこしようよ。

 「おい、遊んでくれよ・・!」

 俺は、喰いすぎてデブになりすぎたのか?

 力が強すぎるのかなあ・・・。

 しょうがねーよ。

 食べ物は、何時も食べられるから・・・。

 この部屋に来るジジイの名前も「ハル」が付く。

 毎日、飽きずに草取りをしている姿がベランダから見える。

 このジジイも、良く食べているではないか。

 俺だけが食べ過ぎとは、言わせないぜ!

 ジジイは俺をすぐ叱る!

 先日、俺が気持よく棚の上を散歩していて、ついコップにつまずき、床にコップを落としてしまい、コップが割れた。

 ジジイは、俺を引っぱたきおった。

 そんなに怒ることじゃあないのに・・・。

 ジジイこそ、俺の通り道にコップなんぞ置いておくな!

 もっと整理して俺の通り道に何かを置くな!

 そして昨日は昨日で、網戸の上の方に、虫がとまっていたので、俺がその虫を退治してやろうと思って、網戸を登ってやった。

 網戸は、俺のツメに引っかかるように穴がうまくあいていて、登るのに都合がよいのだ。

 飛びついたら、虫が下に落ちたので、俺も得意の空中回転をし、ヒラリと飛び降りた。

 網戸に穴があいたようだ。

 また、ジジイが怒りよる。

 網戸は、初めから穴があいているじゃん!

 少し大きめの穴もあっていいじゃんか!

 虫が逃げてしまったのではないか!

 俺が一生懸命にやっているのだから、邪魔をするな!

 

 虫と言えば、俺は虫とりの名人である。

 見つけた虫を、低姿勢でじーっと上目づかいで見ていて、足と体をゆっくりと動かし、戦闘態勢を整えて、頃を見計らい、飛びついてやる。

 猫パンチで、少しの間、チョイ、チョイと遊んでやる。

 虫の野郎がくたびれたところで、「いただきまーす。」

 動くものは何でも見逃さないぞ!

 俺が小さい時のことであるが、ジジイと一緒に寝ていて、ジジイの手の指が動いたので、ジジイの手を引っ掻いてやった。

 ジジイは、ビックリして置き上がり、俺の頭をたたきおった。

 それなら、動くな!

 動かなかったら、引っ掻きはしない。

 

 今、俺がハマっているのは、ジジイが買ってきて、室内用物干しに吊り下げた、ネズミのおもちゃだ。

 猫パンチの練習がムチャクチャ出来て、飽きが来ない。

 このおもちゃの匂いも俺は好きだ。

 飛びつき、猫パンチ!!!

 楽しくて、楽しくて・・・。

 ジジイよ、ありがとう。

 えっ?何でそんなに猫パンチの練習をするのかって?

 あったりめーよ、今は、まだ子供だが、将来の夢は、オニャンコクラブボクシング協会のヘビー級の世界タイトルのベルトを手にすることよ。

 亀田さん兄弟なんぞは、隅に置いとけ!

 毎日が、忙しく、楽しい。

 俺は、疲れはしないが眠くなると、独眼竜や日系ブラジル1世の白猫親分のところに行くと、優しく体をなめてくれる。

 ありがとう。

 ゆっくり眠ることが出来るよ。

 小さい時は、ジジイと一緒に寝ていたが、夜中に起きて、走りまくったり、ガサガサやっていたら、オジイの奴、一緒に寝なくなってしまった。

 少し、寂しいが、仕方がない。

 大きくなってきたのだから、これぐらい我慢しよう。

 ジジイがコンピューターに向かっている時に、膝にのってやると、ジジイの奴、喜んで撫でてくれる。

 今日も、ジジイの膝に乗り、ジジイと遊んでやろうか・・・。

        爺さんよ 俺は子供よ 元気よく

             遊んでいるんだ あまり叱るな!

オニャンコクラブボクシング協会のヘビー級世界タイトルは、もうすぐ俺のものよのお・・・!!

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