風よ伝えて(爺さんのブラジル移住)第136段
乗合いバス
ブラジルに移住し、10ヶ月が過ぎた。
夏バテはない。
すこぶる、元気である。
猛暑は過ぎて、朝の空は「うろこ雲」が浮かぶようになってきている。
爽やかである。
夜、庭に出てみて驚いたが、天空高く「オリオン座」が見える。
「オリオン座」に間違いないと思う。
これが間違いなら、宇宙に「オリオン座」が2つあることになる。
星座についての知識のない私にとっては、ブラジルでも「オリオン座」を見ることができるとは驚きであった。
10ヶ月間の出来事を、つたない文章で書き綴ってきたが、それ読み返してみた。
ブラジルでの生活の中で、1番お世話になっている「乗合いバス」について、書いていなかった事に気が付いた。
爺さん、忘れっぽいのである。
バスについて、書いたのは、65歳以上は無料ICカードがあることだけで、他には書いていなかった。
さては、「乗合いバス」について、書きとどめよう。
バスは、サンパウロやグラルーリョスでは、一般人の足として利用されている最たるものである。
サンパウロでは、高架でバス専用道路が作られているところがある。
また、バスの後に座席だけの車両を2つも付けて3両のバスが繋がって走っているバスもある。
3両のバスをつなげて走っても、道幅が広いから大丈夫なのである。
トロリーバスを走らせている地域もある。
街中至るところにバス路線が張り廻らされている。
「バスを見ない風景はない。」と言っても過言ではない。
朝、4時から深夜まで走っている。
私は、このバスのお陰でグラルーリョスやサンパウロの街に行くことができる。
今、自動車の運転免許を収得(まだ、免許証は発行されてはいないが)したが、今後もこのバスのお世話になろうと思っている。
スリに注意しながら・・・。
バスの路線が街中を網羅して走っているのであるから、バス停も街中に網羅されている。
あちら、こちらに行くバスが停留所に次々に来る。
自分の乗りたいバスが来ると、手を挙げてバスを止めてもらう。
バスターミナル以外の巷のバス停では、列を作ってバスを待つ姿はない。
バス停では、行き先が違う人がバスを待っていて、どの人が、何処に行きたいのか、わからないので、列を作ろうとしても、バス停では列は作ることができない。
バスが来て、乗り込むと、腰高くらいの鉄パイプ製の回転式ドアーがあり、その横に車掌が座っている。
この回転式ドアーを通らないと、座席のあるところには入ることができない。
何歳までの子供が無料かは知らないが、子供は、回転式ドアーの下の隙間を、リンボーダンスがごときにくぐり抜け、座席の方に入っていく。
大人は、現金か、プリペイドカードか、私のように無料のICカードを検知器にかざし、緑のランプが付くと、座席の方に入ることができる。
座席は、日本のバスと同じように左右2つずつの座席が並んでいる。
日本のバスとの違いは、座れない人のために、転倒防止用の金属製パイプがバスの天井の前から後ろに向けて左右に1本ずつ付けられていて、その金属製パイプから下に座席の背もたれに繋がってここにもパイプが設けてある。
とにかく、道路は、デコボコで、運転も荒い。
走る、走る、「俺の道だ、どいた、どいた。」と言っているようだ。
そして、急発進に急ブレーキ。
カーブの道でも速度は、さほど落とさない。
金属パイプにつかまっていなくては、即、転倒である。
座席には、背もたれに黄色で識別されている座席がある。
それは、高齢者、身障者(怪我をしている人も含めて)、妊婦、子供づれ、そして肥満の人の優先シートである。
お互いに譲り合って座っている姿をよく見かける。
でも、私は、どちら?
高齢者?・・・肥満の人?
判断は、読者に任せる。
言いたいのは、何故、肥満の人の優先シートなの?
地下鉄にも、優先シートが備えられているが、肥満の人用はない。
バスが揺れるから、急発進、急ブレーキで、肥満の人は危険とされているからである。
こんな状況が、バスの進行状況である。
ところが、車掌さんは、呑気である。
停留所を出発すると、うとうと、そして、停留所でバスが停車すると、目を開け、発車すると、またうとうと・・・。
あるいは、読書をしている車掌さん、携帯電話でメールやゲームをしている車掌さん。
運転手と大きな声で話し続けている車掌さん。
色々である。
車内販売がる。
あるバス停で、物売りが乗ってくる。
ガムとか、キャラメルとか、ボールペンなどを売る物売りである。
1ヘアウか、2ヘアウくらいの品物である。
その売り方は、まずは乗客の1人々々に品物を配り、配り終わると、大声で品物の説明や値段を言う。
其の後で、また、1人々々廻り、品物を回収する。
その品物が欲しい乗客は、お金を出し買う。
この作業を、1区間内で済ませ、売り子はバスを降りていく。
これは、一般の売り子で、バスを運営する市当局が販売しているのではない。
伯は、1度キャラメルを1ヘアウで買ったことがあった。
バスの中で食べた。
レモンの味がした。
結構、美味かった。
何もない、空虚なバスの中では、心の居場所を見つけ、落ち着かせてくれた。
バスは、地下鉄のようにエアコンは付いていない。
日の当たる方に座ると暑い。
エアコンがなくても、走っている時は、窓から入る風は、暑さを忘れさせてくれる。
こんなことがあった。
リベルダージに買い出しに行ったときのことであった。
高速道路でバスが走っている時に「ゴツン」という大きな音がした。
次のバス停で降車する人のために、停車した。
そして、出発。
でも、動かない。
エンジンは、普通の音をしながら回っているようであった。
動かない。
「皆さん、下りてください。」だって。
伯と一緒に降車した。
2分もしない間に行き先が同じであるバスが来た。
そのバスに乗った。
満員であった。
せっかく座っていたのに、今度は、立って・・・。
文句を言いたかった。
でも、気をとりなおし思う。
ここはブラジル。
かくて、乗合いバスは、人々の生活、そして、人々の人生、喜怒哀楽を乗せ、走り続けている。
今からも、私のブラジルでの人生を乗せて、きっと、何時までも、走ってくれるであろう。
お世話になることを、お願しておこうではないか。
でも、私は、まだまだ肥満の人。
優しく走って く だ さ い。
来るバスと 行き去るバスの 生き舞台
人の心を 今日も運ぶや
※サンパウロの幹線道路には、四差路の交差点というものは少ない。
立体交差が多い。
東西に走る道路と、南北に走る道路は、立体交差になっていて、日本の高速道路で、インターチェンジに設けられている円を描きながら侵入していく通路のようにカーブを描き、方向転換をするように出来ている。
その円を描くカーブでもバスは、速度をさほど落とすことなく進むのでバスの乗客は、金属パイプにしがみつき、その場をしのぐ形となる。
気を抜くことは、許されない。
肥満で、座席に座っていても、気を許してはいけない。
客席専用車両を連結し、一般道を堂々と走る乗合いバス。
トロリーバスが、架線に沿って、交差点をうまく曲がっていく。
バス内に取り付けられた回転扉。
お金を払いうと、開店できるようになり、座席のある場所に入ることができる。
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