風よ伝えて(爺さんのブラジル移住)第126段

ふくろの事 親への恩

 兄は、親おへの恩をどのように思っていたのであろうか?

 兄が執筆した本の中で、兄は、「日中戦争のさなかに生まれた時代の子は、幼少時に両眼を失明、そして、奇跡的に治り、光を取り戻した」と書かれているようだ。

 この時代の子とは、誰のことか?

 兄は、幼少時に「色弱」で、毎日、隣町の眼医者に電車で通院していた。

 おやじは仕事(紳士服仕立)、おふくろはその手伝いと家事に追われ、小学1年生になる兄(私の1番上の兄)に連れられて・・・。

 家族総出であった。

 苦しい家計の中、色弱を何とか治してやろうと、おやじもおふくろも仕事に精を出していたと思う。

 そして、兄の眼は、よくなっていったのだ。

 「奇跡などという言葉は、何処にもない。」

 家族の愛情、そして絆の中で治癒していったというのが事実である。

 兄が執筆した本の中の少年が、兄でなければ、私の本を読む力がなかっただけの話である。

 しかし、そうでもあるまい。

 親への恩。

 まさか、「私は、生まれた時から、すでに自分でパンツを洗い、そして洗ったパンツを自分ではいていた。」

 そんな奴は、いないのである。

 おまんまも、食べさせてもらっていたはずだ・・・。

 誰でも、親への恩はあるはずだ。

 この兄の何処に親への恩を感じさせる行為があったであろうか。

 幼い時に、親に色々な世話をかけ、成長していく。

 そして、成長した暁には、自分の事は自分でやり、今度は、親への恩返しをするのだ。

 この兄は、誰にも面倒を見てもらわずに、成人したのだから、恩返しすることは何もない。

 そう、言っているようだ。

 兄の考えは、「・・・・・・・・・」

 私の世界ではない。

 私は、兄の両親への恩返しを見たことがない。

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