風よ伝えて(爺さんのブラジル移住)第123段
食べてもらった
ブラジルに来て、9ヶ月が過ぎた。
もっと長い間、ブラジルにいるような気がする。
しかし、私は、まだ「日ブラ人」である。
ブラジル人になることはできないが、ブラジル人の生活に近づくために、沢山の事を身につけなくてはならない。
先日、バスの中で、折りたたみ傘をスリに持っていかれたことでも、まだブラジルの生活の中に入り込んでいるとはいえないだろう。
20年余り前に、沢山の日系ブラジル人が日本に仕事を求めて来日した。
私の勤める会社にも沢山の日系人が働きに来始めていた。
社員寮が満員になり、民間のアパートを借り、日系人の住まい家とすることになった。
日本語を話すことができる順に民間のアパートに引越しをすることになった。
ところが、ある日曜日、お昼頃に私に、会社の上司から電話があった。
民間のアパートに引越しした日系人の問題であった。
アパートの大家さんからの電話で、アパートに移った日系人が大きな音で音楽を聴いていて、近隣の住民から苦情が入ったとのことであった。
上司からの連絡で、私はそのアパートに急行した。
「ここは、日本、もっと小さな音で音楽を聞かなくては・・・・。」と、注意した。
住民である日系人は、素直に聞き入れてくれた。
そして、その後、そのようなトラブルは発生しなかった。
その日系人は、伯なのであった。
これ以外に、日系ブラジルの人には、日本で生活をするために、事前事後、いろいろ話をしていた。
今度はその逆で、私がブラジルで生活をしていくために、沢山の事を知らなくてはならない。
伯が、何度も私に注意していた、ブラジルでの「スリ」ということを、私は軽く考えていた。
今、私はブラジルにいるということを、もっと大きく捉え、伯の注意を素直に聞かなくてはいけない。
そう、感じている。
鯛焼は、2度目のトライをした。
先回の生地の軟らかさと餡にするカスタードの甘さを改善するためのものであった。
日本から鯛焼と一緒に持ってきた、「パンダ焼」も焼いてみた。
パンダの形は、大きいパンダと小さいパンダの2種類の大きさの金型を日本から持ってきている。
その内の、小さい方をトライしてみた。
先回と比べて・・・。
爺さん、わからない・・・。
生地は軟らかく、「スポンジケーキ」に近い生地のようであることはわかった。
わかったのはそれだけで、他にどのように変わったか・・・。
何を食べても、うまい、うまいと、食べてしまう爺さんには、わかりはしなかった。
わかったのは、味については、爺さんが、チンプンカンプンであることだった。
昨日は、ジンタの親戚で還暦を迎える人の誕生日会であった。
参加者は、一品ずつ食べ物をもっての参加であった。
鯛焼と、ミニパンダを50個ずつ持っていった。
日本から持ってきたとか、これはこういったものとかの能書きは一切しなかった。
パーティーはいつも、先ずは皆さんが持ち寄った食べ物を食べることからはじまる。
そして、食事が終わった頃に、デザートが並べられる。
鯛焼と、パンダ焼はデザートで並べられた。
私は鯛焼とパンダ焼が並べられた机の横に立ち、状況を観察することにした。
初めに「これは、こういうものだ・・・。」とか能書きをしない中、どのように思われるのだろうか・・・。
デザートということで、甘い物ばかり並べられている中、さほど甘みでの勝負ということではなかった。
食事を終えた参加者が、デザートが並ぶテーブルにデザートを取りに来出した。
私は、テーブルの近くで、鯛焼への参加者の反応を観察した。
ブラジルではこのようなパーティーでの食事や、デザートは、1枚の皿に各自が食べたい物を乗せ、各自のテーブルに持って行って食べる。
デザートが並ぶテーブルに次から、次にデザートを取りに来た。
鯛焼、パンダ焼を見て・・・。
何だろうか、じっと見つめ、取り皿に取る人、取らない人、様々であった。
食べ物は、取り皿に取り、各自のテーブルに持って行って食べるが、鯛焼を何だろうと思ってか、デザートの並べてあるテーブルから鯛焼きを取り、その場で食べている人が出てきた。
それが、特に男性に多かった。
やはり、初めて見るものであるから、じーっと見てから、知らんふりする人、皿に取る人、その場で食べる人、様々であった。
子連れのお母さんは、自分が試食してから子供にパンダ焼を手渡ししていた。
このパーティーで、食べる時は、テーブルで、ナイフ、フォークを使っていたが、鯛焼、パンダ焼は、歩きながら、食べている光景を作ることが出来た。
そんなに長い時間ではなかった。
1つも残らずに食べてもらった。
成功であったかどうか・・・。
わからない。
でも、美味しく食べていただけたと思っている。
ブラジルの夏は、今日も雨。
真上の空に灰色の雲がゆっくりと広がり、暗くなり、風、雷、そして雨。
サンパウロでは、河川の氾濫を抗議し、バスを燃やす騒動である。
「夕立もどき」は何時まで続くか。
ブラジルは、あと1ヶ月でカーニバル。
リオ、そして、サンパウロ。
ブラジルの人達が待ちに待ったカーニバルの始まりである。
じっと見る フォークで割って 食べてみる
鯛焼君の ブラジルデビュー
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