風よ伝えて(爺さんのブラジル移住)第121段

雑記

 余り書きたくない事柄である。

 でも、自分がブラジルで生活していくために、肝に命じておかなくてはならない。

 私は、伯が言っていることを軽く思っていた。

 「そんなことは、起こったとしても稀なこと。」と、思っていた。

 

 「・・・・・・・・。」

 傘がない。

 折りたたみの傘が消えた。

 朝、家を出る時、空は晴れていたが、何時雨が降るか判らないので、リュックサックに入れたはずだ。

 リュックサックのポケットより少し大きかったので、ファスナーを締めても、折りたたみ傘の取手の部分は、ポケットの外に出ていた。

バスに乗ったが席がなく、立っていた。

 バスは、さほど混雑してはいなかった。

 立っていても、隣に立っている人とは、体が触れ合うか、触れあわない程度であった。

 バスに乗ってから20分ほどして席が開き、座った。

 伯が座っている席は、少し離れていた。

 居眠りもせずに、アルメニアに着きバスを降りた。

 

 バスを降りてから気が付いた。

 「ない・・・、ない・・・、消えた・・・。」

 折りたたみ傘がない・・・。

 「スリ」に持って行かれていた。

 どこで・・・?

 いつ・・・?

 わからない。

 バスの中でスリにであってしまった・・・。

 全く、気が付かず、全く、わからない。

 

 この折りたたみ傘は、日本にいた頃に、伯と色違いのおそろいの物を買い、少なからずに、想い出がある傘である。

 

 伯が私に、外出する時に、何度か私に言っていたことは「人混みでは、スリに注意すること。」

 私は、「そんなことは、いつも起きることではない。」と思っていて、余り注意をしてはいなかった。

 今日は、グラルーリョスで日本料理に使う醤油や酢、ふりかけ、豆腐などを買いに出かけたのであった。

買った物を入れるために、リュックサックを私が持って行くことになっていたのである。

 そのリュックサックを私は、背負っていたのである。

 伯の言うとおり、スリは周囲を見渡し、獲物をさがしていたのであろう。

 折りたたみ傘でも、なんでもいいのか?

 持っていってしまった。

 

 伯の言葉をそのまま、しっかりと認識していれば、スリに対する心構えは、変わっていたであろうに・・・。

 ブラジルに来て、生活は「郷に入らずんば・・・。」と思って生活をしてきていたはずだ。 また、ブラジルでの生活に馴れてきている。

 そう思っていたが、甘い考えであった。

 私の今の生活は、日本人でなく、ブラジル人にもまだなっていないようだ。

 「日ブラ人」である。

 

 傘君よ!悪い事を包んでいる雨が降る時は、スリ君をその悪い雨にかからぬように、守ってやってくれ!

そして、明るい太陽が輝く場所にスリ君を連れてやって欲しい。

 スリ君が、心を入れ替え、幸せになるように、お手伝いしてやってくれ!

 お願いしますよ。

 なんて思って、気持を変えておこう。

 そして、今後、ブラジルでの生活の細かいところを伯に教えてもらいながら、ブラジルでの生活に間違いのないようにしていこう。

 今より、伯の言うことの重みを感じなくてはいけない。

 これから書くことは、ブラジルの中で起こっていることである。

 伯は、リーマンショックの少し前に1度帰国しているが、その時の経験で、地下鉄の駅の人混みの中で、スリにサイフを抜かれた。

 キヨカズは、拉致され、お金を取られている。

 テテは、街中で車を盗まれそうになった。

 これは、私がブラジルに来る前のことである。

 私がブラジルに来てからの事。

 伯とミユキがグラルーリョスに買物に行く時のバスで、2人組がバスに乗ってきて、車掌に銃を突きつけ、現金を取っていったとのこと。

 バスは、警察に知らせるでもなく、何もなかったように走っていたとのこと。

 キヨカズとドライブに行った時のこと。

 道路には非常線のテープがめぐらされ、道路の中央分離帯では、警察が犯人と思える人物を羽交い絞めにし、横たわり、「〇〇BAR」と書かれた看板のある店に警察が出たり、入ったりしていた。

 先日のこと、

 伯と2人で診療所に私の薬を貰いに行った帰りの事。

 朝顔が咲き誇るスーパーマーケットの歩道を歩いていると、1人の中年の女性が寄ってきて、早口で伯に話はじめた。

 街中で銃撃戦がはじまっていた。

 停留所に止まっていたバスに乗用車が追突したのであった。

 そして、乗用車の運転手は、車を捨てて、その場を離れたようだ。

 どのように警察が来たかは判らないが、パトカーが何台も追突現場に停まっていた。

 「銃撃戦になっている。近づかないように・・・。」と女性の忠告だった。

 伯と私は、速足でスーパーマーケットの中に走って逃げた。

 追突した車は、盗難車だったのであろうか。

 ブラジルでは、年間35万台の車が盗難の被害に合っている。

 追突した車が盗難車であった可能性は強い。

 それだから、逃げたのであろう。

 日本の街中の人達の動きとブラジルでの街中の人の動き、そして、1つの事を決めるための時間は、ブラジルの方がとてもゆっくりとしている。

 「のんびり」という言葉を使ってもよいと思う。

 しかし、私の隣にいる見知らぬブラジル人は、何を考えているのか?

 伯の言葉をしっかりと受け止めて生活をしなくてはいけない。

 

      妻が言う 言葉言葉の 深い意味

           我がブラジルで 生きるバイブル

   

 

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