風よ伝えて(爺さんのブラジル移住)第119段
鯛焼のトライを始める
この5日間は、昼過ぎに時から3時ごろに雨になっている。
いつものように風が吹き始め、稲妻が走り、落雷の音、そして、雨が降り始める。
稲妻の輝き、落雷の音は、私が日本で経験してきたものより、はるかに規模がでかい。
稲妻が走ると、空を割ってしまうような「ビシビシ」という音が耳元に響く。
そして、落雷の音は、天が天の足を持ち上げて、「ドン」と一発、大地を踏みつけ、通り過ぎていくようだ。
そして、その様子は、日に日にでかくなってきているように感じる。
短い時間の雨であるが、庭はプール状態となってしまう。
草取りは、できない。
日本での夕立と同じ現象のように思える。
さて、美味しい「鯛焼」を作ろうではないか。
先ずは、材料をそろえた。
日本にいた時に、鯛焼の焼き方の講習に行った時の材料を捜してみたが、タマゴと練乳があっただけであった。
ブラジルでは、小麦粉は一種類しかない。
日本での講習に時は、講習を受けた会社が材料を販売用に調合してある物を使用した。
ブラジルでは、売っているわけがない。
そんなことで諦めてはいけない。
伯と2人で、取り揃えた材料をミックスし始めた。
卵の数と水の量は、日本で教えてもらった分量を使った。
爺さんが、一生懸命に混ぜ、ホイップを作った。
結構な運動量であった。
あとは、甘みを付けるための材料と隠し味をかるく入れ、小麦粉をざくりと混ぜた。
鉄板の温度は、鉄板に少し水を垂らすと、水玉がはねるくらいの温度であった。
金型への初めての流し込みであった。
「・・・・・・・・。」
おかしい・・・。
初めからおかしい・・・。
生地の焼け方が、日本で講習を受けた時より格段に速かった。
金型のすみずみまで生地が伸びる前に、すでに固まり始めてしまい、形ができない。
そして、想定した焼き上げ時間の半分にもならないうちに、焼き過ぎの色になってしまった。
材料が違うと、これほどまでに焼き具合が違うのか。
伯と相談した。
日本にある材料は手に入れることはできない・・・。
とりあえず、水の割合を変えてみよう・・・。
水の割合を10%、15%、20%増やした物を作った。
トライをしてみると、水の割合が多くなるほど流動性が出て、金型の上での形作りはよくなることが判った。
この時点で、水の量は日本での講習テキストにある分量より、20%増とした。
焼き色も問題はない。
「あんこ」である。
ブラジルでは、日本の「あんこ」は、ブラジルでも、饅頭に使われているが、甘みを作るには一般的ではない。
それに、使われているのは、「こしあん」である。
私がブラジルに来て、はじめてリベルダージに連れて行ってもらった時に食べた今川焼に使われていたのも「こしあん」であった。
「つぶあん」は、見当たらない。
ブラジルでは、「ヘジョアダ」という豆と肉で作る料理があり、日本人が見ると一見「ぜんざい」にみえる。
逆に、ブラジルの人が「つぶあん」や「ぜんざい」を見ると、「ヘジョアダ」と間違えるであろうし、「ヘジョアダ」は、甘くない。
私はこのような事で、「あんこ」は、ブラジルでは、さほど歓迎されていないと思っている。
ブラジルでの甘いものに何があるか、伯と
話をした。
その話の中で「チョコレート」は勿論、「カスタードクリーム」、「ココナツ」の名前がでた。
「チョコレート」は、熱でトロトロになってしまうということで、ペンディングになった。
今日のトライは、「カスタードクリーム」を使った。
焼きムラや、金型に材料が完全に充填されていない物も出来てしまったが、とりあえず で き た・・・。
試食会でのこと・・・。
出席者、お母さん、ミユキ、テテ、ジンタ、ネネのメンバーであった。
鯛焼の入っている箱のふたを取るや、ネネの声。
「%&#‘&“!&!」
眼を丸くし、鯛焼を指差し、大きな声でさけびはじめた。
私は何を言っているか判らなかったが、鯛焼を見て、感動していることが覗えた。
皆に配り、試食した。
わたしは「おいしい」の言葉を嬉しく思った。
焼き具合、生地の味、カスタードクリームへの意見が出た。
今度は、その意見を参考にしてトライをしようと思った。
試食会の意見の内容は、次のトライの段に書くことにした。
「1回焼くと、何分かかる。」
「1回焼くと、幾つできる・」
「1日、何時間焼くと、何回焼ける。」
「1つで、いくら儲かる。」
「1ヶ月で・・・。1年で・・・。」
鯛焼じじいの皮算用である。
うまくいくのかなあ・・・。
ガスコンロ ほのかに香る 鯛焼に
夢を追いつつ 伯と2人で
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