風よ伝えて(爺さんのブラジル移住)第109段

夏草や

 今日は、久しぶりに太陽が顔を出しっぱなしの1日であった。

 私の草取りの格好は、麦藁帽子、長靴を履き、腰には蚊取り線香を下げている。

 きっと、歌にある「与作」は、こんな恰好をしていたと思う。

 低い椅子に座り、草取りをしている。

 太陽が照りつけ、素足で長靴をはいているので、太陽の熱で熱くなり、足を動かさないと、火傷をしそうで、たまったものではない。

 時折、そよそよと南の風が吹いてくる。

 日本と違って、南の風は冷たく、カラッとしていて気持がよい。

 樹々の葉を優しく揺らす南の風が、何時も爺さんを包んでいて欲しいのだが。

 汗かきの私の額から出た汗は、額から流れ落ちる前に乾いてしまっている。

 それでも汗は、麦藁帽子を湿らせた。

 ブラジルは、日本のように、北風、南風、偏西風といったものがなく、1年中南の風が吹いているのか?

 2階のベランダから見える広場の中央ではためいているグラルーリョスの大きな市旗は、北の方角になびいている。

 私がブラジルにきてから、多くの日はこの南の風である。

 冬でも吹いていた、あの心地よい「冬日和」を私にくれたあの風が夏になっても、まだ吹いているようだ。

 

 草取りは、庭が太陽で乾き、土は、草取りをするには、最高に乾き具合であった。

 地表を掘り起こし、雑草を取り除こうとすると、土がポロポロとくだけ、簡単に雑草を分離することができた。

 しかし、ビックリすることが、起きてしまった。

 「掘り起こし作戦」で、雑草を皆無にしている。

 しかし、それでも「草取り追試」をしなくてはならない。

 根気よく、「草取り追試」をしなくては、到底雑草はなくならない。

 頑張って草取りをしている。

 庭の入口付近の雑草を掘り起こし、雑草を皆無にしたが、とてつもない速さで雑草が再び生えて来ている。

 それも、「カヤツリグサ属」の「黒丸インベーダー」である。

 他の雑草は、それなりに減っているが、「黒丸インベーダー」は、草取りをする前よりも増えているようにもみえる。

 双曲線の凘近線のように0に向けて、減っていくと思っていたが、この「黒丸インベーダー」は、双曲線でなく放物線を描くがごとく、増殖している。

 もしくは、昨年出来た種が、一斉に発芽したのかもしれない。

 とにかく、凄い勢いで成長を始めている。

 「夏草や 兵どもが 夢の跡」

 まだ、夏がはじまるところにきただけである。

 まだまだ、雑草君は、元気に成長することに間違いない。

 まだまだ、雑草君との全面対決は続く。

 1本ずつ、丁寧に取り除くしかない。

 庭の中央部の「掘起し作戦」は、まだこれからである。

 サンパウロでは、もうすぐ大雨の季節になる。

 丘陵地の麓にあるマチダ家に、どのように大雨が関わってくるのか、それを見てから、次の作戦に出よう。

 それまでは、草取りに専念しよう。

 

 1日中、陽は照り続けていた。

 ブラジルの夏になろうとする空には、まだ積乱雲はない。

 空一面のウロコ雲であった。


       夏草や 草取り爺が 夢に見る

           伸びる速さに 眼を覚ましけり

「黒丸インベーダー」は、写真のように全部が地中でつながっている。

庭の1部は、夏草が茂り、元の状態に戻ってしまっている。

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