風よ伝えて(爺さんのブラジル移住)第93段

子猫が1匹仲間入り

 今、10月15日、午後6時30分である。

 日本は、ブラジルより12時間早い。

 インターネットで見ると、日本本土に台風は、少しそれたようだが、大型の台風のようで、日本の知人に被害がでないか心配である。

 ブラジルは、今朝、4時頃、大きな音の雷が鳴り、雨になった。

 午前中には、晴れてきた。

 春になってから、雨が多い。

 じめじめしていないが、梅雨に似ている。

 それでも、先日の金曜日は、春らしく、清々しさが、風と共にやってきた。

 空は、雲1つなく、小鳥も快調に、囀り合っていた。

 今日は、1日中、忙しい日であった。

 2ヶ所の診療所に、私の薬を貰いに行き、バスターミナルで、伯と待ち合わせた。

 伯は、自動車の運転の練習で、練習が終わり次第、バスターミナルへ来ることになっていた。

 待ちあわせの時間は、10時半であった。

 待ちあわせの時間より、10ほど遅れて、伯がやってきた。

 伯が来てすぐに、バスが来たので、急いで乗り、グラルーリョスに出かけた。

 グラルーリョスでも、1ヶ所、私の薬を貰う診療所がある。

 バスから降りて、2キロほどのところにある。

 診療所に着くと、薬を貰いに来ている人が少なく、待ち時間が短くて済んだ。

 薬を貰いまた、バスに乗り、グラルーリョスの街に向かった。

 そして、銀行、昼食、買物の用事を済ませた。

 公証人役場で、伯が勉強する学校に提出する、「本人であることの証明書」を作ってもらった。

 結構歩いての地にバスの停留所についた。

 今日乗車したバスは、3台とも、待ち時間は少なく、座ることも出来た。

 それでも、 マチダ家に近いバス停に着いたのは、午後4時を過ぎていた。

 

 バスを降り、家の近くに来た時に、伯が、立ち止まった。

 草むらの方を見つめ出した。

 同じ毛並みの子猫が2匹、草むらに捨てられている。

 シャム猫の血の入っているような毛色の子猫が、草むらでじっとしている。

 2匹が座って、こちらを見てないた。

 小さな声である。

 私は、伯がきっと拾って帰ると思った。

 しかし、少し立ち止まって見ただけで、何も言わずに家に帰った。

 

 伯は家に帰り、カバンを置くやいなや、小さなダンボールを用意し、玄関の方に歩き始めた。

 やはり・・・。

 私は、事情が判っているので、何も言わずに、伯の後を追った。

 「可哀相な子猫ちゃん。」と、伯は思ったのである。

 2匹の子猫は、まだ小さな声でないていた。

 ・・・・・・・・・・

 

 そして、2匹は、マチダ家の玄関をくぐったのである。

 伯が、子猫を拾ってきたことを話した。

 お母さん、ミユキ、そして、ネネは、笑顔で子猫を迎えた。

 その中でも、ネネは、大はしゃぎで、子猫を抱いたり、撫でたりした。

 伯が、伯の従兄弟に電話をし、1匹は翌日、従兄弟に引き取られて行った。

 商談成立である。

 この従兄弟は、マチダ家同様、動物好きで、特に猫が好きということと、今、猫を飼っていないことを、伯は知っていたのである。

 

 こうして、マチダ家は、猫が4匹になった。

 テテの友達で、猫好きの人がいて、捨て猫を拾ってきて、17匹も飼っているとのことである。

 上には、上があるものだ。

 1匹になった、子猫は、早速、ねぐらを作ってもらった。

 動物好きのマチダ家のことであるので、1匹くらいの猫ねぐらは、買わなくても在庫がある。

 まだ、小さいので、夜は、他の3匹とちがい、私が寝ている部屋に、ねぐらを運び込んでいる。

 ところが、私が寝ていると、ベッドに登り、私が手を動かすと、手にじゃれてきたり、私の耳をそばえたりする。

 ピョン、ピョンはね、よく動く。

 そして、最後は、一緒に寝てしまう。

 昼は、他の3匹と一緒の部屋に移動する。

 特に、独眼竜のミケと相性が良いようである。

 ミケのネグラに入り、2匹で体をなめあっている。

 私が、部屋に入ると、小さな声で、あまえて寄ってくる。

 膝に乗せて、撫でてやる。

 あまり動物好きでなかった私が、ブラジルに来て、犬や猫と、今のように、付き合うとは全く思っていなかった。

 すごい、変わりようである。

 これは、心がおだやかになり、非常に良いことと思っている。

 新しい、子猫の名前は、伯が命名し、「ハル」と決まった。

 春に連れてきたから、「ハル」である。

 私の名前も「ハル」が入っている。

 「ハル」の尻尾は、生まれつきか先が曲がって短い。

 私と同じ「ちんちくりん」である。

 

 私も子猫も「ハル」である。

 仲良くしようぜ、兄弟!

 

      草はらで 捨てられし子猫 抱き寄せる

            可愛い顔に もう怖くはないと 

拾われた2匹の子猫。

その1匹、「ハル」。

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