風よ伝えて(爺さんのブラジル移住)第87段
スタートラインに立つ
今朝は、すがすがしい風が心地よかった。
けれど、1昨日まで、毎朝鳴いていたサビア君が昨日、今日と2日の間、鳴き声がない。
求愛が成功し、新婚旅行に行っているのかなあ。
であれば、それでよいことなのだが。
帰ってきて、また美しい声を聞かせてくれ。
新しく始めようとしている生活のため、サンパウロの警察本部と、不動産取引業のための専門学校を訪れた。
近頃は、赤い色が連続して私の周囲を囲んでいる。
ついでに、新しく始めようとすることに対して、真っ直ぐに向かい合うために、「真っ赤なフンドシ」を締め直しておこう。
伯と2人での外出である。
バス、地下鉄、郊外電車を乗り継ぎ、サンパウロの警察本部に行った。
外国人が、自動車運転免許を取得したいときは、その旨を交通局に申請しなくてはならない。
その申請書を作成してもらうためである。
サンパウロの警察本部は、日本のように、官庁街にあるのでなく、静かな街並みの中に、どっしりとその姿を構えていた。
入り口に続く石段を登り、建物に入ると、数人の警察官が警備のために、ところどころに配置されていた。
受付事務の窓口へ行く前に、本人確認の作業があった。
身分証明書を提示し、要件を述べ、そして、顔写真を撮られ、受付事務の窓口を教えてもらい、中に入った。
歴代の所長と思われる人の写真が飾られている部屋を横目に、受付の窓口についた。
窓口には、女性の事務員が愛想のない顔つきで、事務を執っていた。
伯が要件を言うと、事務員は、指先を舌でペロリとやり、A4の書類を1枚取り出し、伯に渡した。
その申請用紙に、私の個人情報を記入し、サインをし、提出した。
サインは、漢字ではなく、初めてアルファベットで記入した。
事務手続きが終わった。
10日後以降に、申請書を貰いに、再度、来ることになる。
警察本部から、郊外電車の駅まで、1キロほどの距離であったが、伯と2人で、冗談を言いながら、郊外電車の駅に向かった。
伯が、「明日になると、サンパウロの街中のあちこちに写真が張られているよ・・・。」
警察本部で、私は顔写真を撮られている。
『WANTED』
『特徴、ギョロ目、短足、ちんちくりん』
ここから郊外電車に乗り、地下鉄に乗り継ぎ、伯が不動産取引業の勉強をしたいとする学校まで行った。
学校は、地下鉄の「セ」の駅と「リベルダージ」の駅を1辺とする正3角形の位置にある。
1辺の距離は、1キロくらいである。
地下鉄を「セ」の駅で降り、歩きはじめた。
いつの時代に建てられたのか、古い建築様式と思われる石造りの建物が多く建ち並んでいる。
大きな教会が、街並みの古さを代表しているように見える。
きっと、この教会の頂上の十字架は、「セ」の街では1番高い場所にあり、街のシンボルとなっているのであろう。
教会の前の石段には人々が腰をかけ、休息していた。
かなり疲れているようにみえる人もいる。
きっと、教会の聖母は、彼らを救ってくれるでしょう。
歩道は、デコボコが少なく、街路樹は整備され、涼しさを感じさせてくれていた。
今までブラジルで見てきた街並みとしては、この「セ」は1番美しい街並みと思う。
が、やはり、急な坂道が多かった。
少し汗ばんだ状態で、学校についた。
学校といっても、ビルの1フロアーを借り、教室が3部屋、あとは小さな図書館と、事務を執る部屋があるだけであった。
事務の部屋で、伯は勉強をしたい旨を説明した。
試験があるとのことで、パソコンに向かい、伯は試験を開始した。
形式的な試験と思われる。
私は、図書館に入り、本の背表紙のアルファベットをゆっくりと読んでみた。
何が書かれているか、わかるはずがない。
小さな図書館を1回りし、伯が試験をしている部屋に戻った。
伯と遠い位置にある椅子に座った。
昼の12時になり、休憩になったであろう、まだ20歳になっていないと思われる若者が他の部屋から10人ほど出てきた。
勉強をし、何やらの資格を取ろうとしている若者であろう。
その若者たちと一緒に、伯は、今から勉強を始めるのである。
『がんばれ 伯!』
30分ほど過ぎ、パソコンの置かれた机に顔を伏せて、私は眠ってしまった。
疲れはそんなにはないが、待ちくたびれてしまったのだった。
眠ってしまったのは、ほんの10分ほどで、目が覚めた時でも、まだ、伯の試験は終ってはいなかった。
伯は、パソコンとにらめっこを続けていた。
・・・・・・・・
伯が席を立ち、事務員に終わったことを伝えた。
・・・・・・・・
「合格」である。
とりあえず、「おめでとう」
後日、学校からインターネットで、入学許可が下りたとの連絡があるとのことである。
そして、テキストなどを貰いに再度、来なくてはならない。
帰り道、2人でペチャクチャ、今からやらなければならないことなどを、話しながら「セ」の駅まで歩いた。
『日本街』の「リベルダージ」は「セ」の駅の隣である。
リベルダージに行き、少し遅い昼食を食べた。
久しぶりの「寿司」であった。
日本の寿司と違い、「シャリ」がでかく、寿司を1つ口に入れただけでも、口いっぱいになってしまった。
でも、美味しかった。
伯と私のブラジルでの実務が目の前に迫ってきている。
手伝いができることは、手伝ってやるよ。
一緒に手を取り合って、頑張っていこう!
1歩なり 1歩なくして 始まらぬ
2人で進もう 1歩を重ねつ
地下鉄のリベルダージの隣の駅の近くに建っている大聖堂。
その大聖堂の前に造られた石段では、人々が思い思いに座り、休憩していた。
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