風よ伝えて(爺さんのブラジル移住)第86段

曼珠沙華

 1週間以上も続いた雨が止んだ。

 今日は、太陽が見えたり、隠れたりの1日であった。

 ゆっくりと休養が取れたことと、土の乾き具合で、手袋に土がまつわりつくこともなく、草とりは順調であった。

 優しい風さんは、疲れ切った老人(私の事です)をしっかりと見ていたのです。

 きらきら輝くお日さまと、しとしと寂しい雨君を呼んで、会議を開いたのです。

 その議事録は、「疲れ切った老人を救うために、1週間の間、雨を降らすようにすること。そして、休養を取らせること。」に決めたのだ。

 きっと、そうであるに違いない。

 「風さん、オブリガーデン。お陰さまで、疲れが取れました。」

 お彼岸で、東本願寺に行かなくてはならなかったが、取り止めることにした。

 ブラジルでは、11月2日がお盆である。

 その日に変更した。

 前段で、真っ赤な薔薇、真っ赤なフィアット、財布もまっかか、と書いたが、また、真っ赤である。

 日本からのメールで、残暑、厳しき中であるが、お彼岸で曼珠沙華が咲きはじめているとのことである。

 真っ赤な彼岸花、曼珠沙華。

 私の好きな花の1つである。

 ブラジルに持ってこようとしたが、日本の検疫所では、ブラジルに持ち込めるかどうか、はっきりしなかった。

 ブラジルに持ち込める植物のリストを貰ったが、詳しいものではなかった。

 曼珠沙華は、炎のような花弁が素晴らしい。

 真っ赤な花弁は、ゆらゆら、ゆらゆらと何を燃やしているのだろうか?

 1輪だけでも、空を焼いてしまいそうな真っ赤な色の勢い。

 私は、若い頃に、曼珠沙華の写真を沢山、撮った想い出がある。

 それは、今の曼珠沙華の姿でなく、墓地に咲く曼珠沙華であった。

 ヘタクソな写真であったが、墓地に咲いていようが、美しかった。

 ひっそりと咲く曼珠沙華が、何ともいえなかったのだ。

 川岸に植えられた、沢山の曼珠沙華より、里山の野辺で、ひっそりと咲く曼珠沙華が好きだ。

 その方が、曼珠沙華が私に、語りかけているような気がするのである。

 熱く燃える、情念を感じる。

 東浦の野辺には、そんな場所が幾つもあった。

 懐かしく思う。

 曼珠沙華の花言葉は、「また会う日を楽しみに」である。

 会えることを祈って・・・。


     燃えたぎる 心の奥の 情念は

            大空焦がす 曼珠沙華なり

    

竹の下、すがすがしい風に揺れ、咲く曼珠沙華。

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