風よ伝えて(爺さんのブラジル移住)第85段

五ヶ月が過ぎたが

 ブラジルに来て、今日で5ヶ月が過ぎた。

 3ヶ月、4ヶ月過ぎた時は、もうそんなに経ったのか、と思ったが、それから1ヶ月過ぎただけで、もうずーっと前に、ブラジルに来たような感じである。

 「えっつ、まだ、5ヶ月?」

 時の流れは、その時々で速くにも感じ、遅くにも感じる。

 不思議なものだ。

 グラルーリョスの街に行くと、銀行では、警備員が遠くでも、目が合うと手の親呼びを立て、笑顔を私に送ってくる。

 事務員も同じである。

 私も同じように親指を立て、挨拶代わりにしている。

 街を歩いていて、何時も昼食に寄る店の前を通ると、その店の従業員が、こちらも目が合うと、手を振ってくれるようになった。

 私もお返しに手を振る。

 もう、何処に何があるか、わかってきた。

 1人でも、大丈夫と思う。

 この1週間は、雨が降る時が多く、あまり草取りができないでいる。

 土もベトベトで、手袋にこびりつき、はかどらない。

 作戦を変更した。

 グランドカバーを移植した場所に、すでに新しい雑草が、少しずつ生えて来ている。

 それを1本1本引き抜くことにした。

 これは土が雨で柔らかくなっていて、簡単に雑草を引き抜くことができる。

 土の塊を持って、土から雑草を取り外さなくてもすむ。

 他の場所でも、背が高くなった雑草は、この時に引き抜くことにした。

 

 雨が雷を伴って、激しく降ったあと、太陽が顔を出し、そしてまたすぐに、雨が降る。

 そんな日があった。

 半日弱い雨が降り、後は曇り。

 そんな日もあった。

 だらだらと、降っている。

 そして、1週間が過ぎた。

 

 雨のお陰で、疲れが取れてきている。

 この際、疲れを取り除いておこう。

 いつ終わるかわからない草とりであるから。

 不動産取引業を引き継ぐことになった伯の動きは、まだ出て来てはいない。

 伯にとってこの仕事は、ズブの素人である。

 会社は、お父さんの名前が消え、伯の名前が登録された。

 会社には、2人の従業員がいる。

 1人は、45歳くらいの黒人の男性で、名前はフレデリック。

 もう1人は、35歳くらいの女性の事務員で、名前はまだ、聞いていない。

 フレデリックは、20歳くらいの時から、お父さんの会社に勤めている。

 お父さんの厳しい教育で、立派に成長をし、現在は、会社の中心として、働いている。

 大きな家を立て、お嬢さんは、弁護士とのことである。

 伯は、フレデリックに実務を教えてもらいながら、仕事をしていくことになる。

 伯は、不動産取引業の勉強をインターネットで、2年間かけて勉強すると言っている。

 1週間に1日は、サンパウロの学校まで行くことになる。

 不動産取引業の資格は、日本と同じように試験がある。

 日本は、宅地建物取引主任者の試験に合格すれば、不動産取引業の全ての業務をする資格を取得することができる。

 が、ブラジルでは、仕事の内容で、それぞれの資格が必要であるようだ。

 伯は、2年かけてでも、全ての業務の資格を取得したいと思っているのである。

 サンパウロの学校は、夜ということで、伯の帰りは、私がバスで迎えに行くことになる。

 協力しようではないか!

 

 他に何を協力していくことができるかは、その時、その時で相談しながらやっていこう。

 

 しかし、これだけはしないでおこう。

 私は日本の宅地建物取引主任者の資格を取得しているが、ブラジルでは通用しない。

 法的な事とか、契約の事とかに、口出しせずに、他のことで協力していこう。

 ブラジルでの事は、何も知ってはいないことを、肝に銘じておこう。

 私と伯が、まだ日本にいた頃に、伯が、「ひょっとしたら、不動産業を引き継ぐかもしれない。」と、言ったことがある。

 それが、現実化されたのである。

 家業を引き継いだだけで、跡目を継いだわけではない。

 5ヶ月が過ぎた日の、私の心である。

 

        資格取る 2年の月日 去りしあと

                 晴々しきは 妻の姿や


 ※前段で、草とりをしたために、手の指に「マメ」ができた、と書いたが、「マメ」ではなく、「タコ」です。

 間違えました。

 「この、タコ野郎め!」

 庭の入口に群生している、グランドカバーの名前がわかりました。

「DINHEIRO EM PENCA」と言う植物です。

 

0コメント

  • 1000 / 1000