風よ伝えて(爺さんのブラジル移住)第78段

床屋に行く


 床屋に行った。

 ごく普通のことである。

  私は、この2年ほどの間、床屋に行ったことがない。

 伯が、部屋でハサミを使い、うまく整髪してくれていた。

 ブラジルに来てからも、すで2度、整髪してもらった。 

 お母さんがまだ、白内障の手術後の静養期間中であり、伯は忙しく、かまってもらえない。

 

 マチダ家と道を挟んで、20メートルほど行ったところに床屋がある。

 伯に連れて行かれた。

 伯が、私が日本人で、言葉が通じないこと、髪を短くして欲しいことを告げて、私を置いて帰ってしまった。

 店は綺麗とはいえない。

 壁には、床屋さんが応援していると思われる「サントス FC」のユニフォームの柄入りの時計と、ペナントが掛けてある。

 洗髪用の洗面と、2つの回転イスがあるだけである。

 回転イスは、私が小学生頃に見たことのあるような物である。

 グラルーリョスの街中で見た床屋は、きれいであったが、田舎の床屋であるから、こんなものか。

 

 バリカンで頭の周りを短くし、はさみで頭のてっぺんを調髪してもらったが、調髪の腕はよいと感じた。

 ブラジルの暑さには、持ってこいと思われるくらいの短さで、気持が良い。

 壁に貼ってある、手書きの値段表を見て、

 10ヘアウ(500円)を払い、帰宅した。

 

 帰宅してすぐにネネが寄ってきた。

 目を丸くしながら、私の頭をじーっと見て、振り返り、ミユキのいるところに走り出した。

 「ママイ、スズキサン $%&!?*!」と言った。

 ミユキは、何も言わず、微笑んでいるだけであった。

 ネネの言葉は、これに間違いない。

 「ママイ、スズキサンの頭が、真っ白になっちゃった!」

 そのとおりです。

 白くなっちゃったんです。

 私は、2年前から、髪を染めていた。

 それも、私から伯にお願いして、髪を染めたのである。

 それは、日本にいた頃、伯と2人で外食などする時に、余りにも髪が白く、伯が「お爺さんと一緒」と思われるのが可哀相と思い、染めたのである。

 黒く染めていたのである。

 それが、調髪し、髪の付け根の白いところが現れてしまったのである。

 びっくりさせてごめんなさい、ネネくん。


        髪の色 黒くあるはず 白いとは

           ネネはまなこを しろくろさせて

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