風よ伝えて(爺さんのブラジル移住)第60段

百株の赤い薔薇


 庭のレイアウトが決まり、お母さんが育てている植物の移植である。

 地中から、いらない植物が、出てくるかも知れないが、その時はお母さんに相談しよう。

 

 その中で、なんと、庭には、百株を超す薔薇の苗が植えられているのである。

 それも、場所を決めずに、ランダムに植えてある。

 殆どの苗は、真っ赤な薔薇であるようだ。

 お母さんが、薔薇を剪定している時に、勿体ないからと、挿木をされているうちに、こんなにたくさんになってしまった。

 薔薇の苗を数えてみたら、124株あった。

 そのうちの、ほとんどの苗は、真っ赤な薔薇である。

 ピンクと白の苗もあるが、植えてまもない。

 薔薇を移植するエリアは、3か所と決めてある。

 1か所は、一直線に植える。

 庭の奥まった場所に、バナナの木が植えてある。

 バナナの木は、庭木としては、あまり美しくない。

 大きな葉が、枯れたまま、木に垂れ下がる。

 私にとっては、興ざめである。

 何とか、あまり見えないようにしようと思う。

 薔薇を一直線に植えることで、バナナの木が植わっているエリアと、他の植物が植わっているエリアを、まずは分けようと思った。

 薔薇は、あまり背丈が高くないので、バナナと薔薇の間に、これも一直線で、白い花の咲く木を数本植え、バナナの姿を見えにくくする作戦である。

 まだ、白い花の木の種類は決めてはいない。

 高さは、2メートルほどになる木が良い。

 赤い薔薇の花のうしろであるから、白い花の咲く木が良いと思っている。

 バナナのエリアに入るために、2メートルの入り口だけは、薔薇を植えていない。

 移植する場所に、糸を張り、等間隔に竹を立て、一直線になるように、1本ずつ移植をしていった。

 他の2ヶ所は、一直線でなく、薔薇を群生させた。

 土が粘土質で、草取りの時は、根に土がまつわりついたままとなった。

 移植の時は、埋め戻すにも、塊になって、地中に空気の隙間ができてしまった。

 作業着は赤い土に汚れ、長靴にはいっぱいの土がへばりついた。

 1本ずつ、苗を掘り起こし、移植先に穴を掘り、施肥をし、土をかぶせ、水をかけた。

 草とりをしている時よりも、汗をかき、結構な重労働であった。

 1週間かけて、全部の移植が終わった。

 うまく定着してくれると良いが・・・。

 真っ赤な薔薇よ! 早く咲け!

 

 おかあさん・・・。

 赤い薔薇の苗を百株も増やすとは・・。

 剪定をして、捨てるのが勿体ないから・・

 と、お母さんは言ってみえましたねえ・・。

 そうではなくて、南国の情熱的な若さが残っているのでは、ないですか・・・お か あ さ ん 。

 百本の真っ赤な薔薇を、花束にして、だいじに抱きしめ、お父さんにプレゼントするためではないのですか・・・。

 そうだと、お も い た い の で す お か あ さ ん 。

 今度、真っ赤な薔薇が咲いたら・・・。

 1番に咲いた、真っ赤な薔薇を、1本、伯にプレゼントしてみようか・・・。

 ただし、1本だけでにしよう。

 歳を考えると、はずかしいではないか!

 百本もプレゼントしたら・・・。

「あんた、何を考えているんか?」ってブッ飛ばされるぞ!

 そっと、テーブルの上に、1本だけ、飾ってやろう。

 私は、南国生まれでなく、そんなに情熱的でもない。

 よぼよぼの、お じ い さ ん な んで す 。



        増やしけり 真っ赤な薔薇に 南国の

                義母の情熱 義父に届けと 

1列に移植した薔薇の苗。

えんじ色の葉が大きくなり、もう少しでつぼみがつくと思う。

庭の奥まったところに植えてあるバナナの樹。

枯れた葉がたれ差張り、美観を損ねている。

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