風よ伝えて(爺さんのブラジル移住)第49段
六月の空と樹々
今朝、暗いうちから、かなりの勢いで雨が降り始めた。
今は午前10時を少し回ったところだが、まだ降り続いている。
2階のベランダから庭を見下ろすと、あちらこちらに水溜りができ、雨粒が水の輪を作るのが見える。
頬にかかる風は少し冷たく感じ、庭の片隅にあるバナナの大きな葉を、ゆったりと揺すっている。
今日で6月は終りである。
6月に入って3日目に5月では見ることができなかった、雲ひとつない空を見る事ができた。
まさしく秋晴れであった。
次の日も同じような空であった。
多くの日は、五5月より気温は下がっていて、さすがにティーシャツ一枚で過ごすことができる日は少なかった。
鉛色の空の日が多く、太陽が輝く時間が少なくなったように感じた。
犬たちは太陽の輝くと、陽のあたる場所に一斉に移動をし、横たわり、日向ぼっこをする。
人はもとより、犬たちも寒く感じ始めているのだろう。
とは言え、日本の寒さとは全く違って、ブルブル震える寒さではなかった。
3日前に、ミユキが「今日から冬」と言ったが、私には日本の冬と違い、今のこの体感は冬とは全く感じ取れなかった。
今日もそんな感じでいる。
しかし、それは私の体が鈍感であるだけのようでもある。
季節は私の感覚ではわからないうちに変わっていると知った。
それは、一昨日から飛行機がマチダ家の上空を飛ばなくなっているのである。
風向きが変わっていたのである。
そのために、飛行機の離着陸の方向が変わっていた。
飛行機の姿と音がマチダ家から遠のいて、マチダ家の上空を飛ばなくなり、静かになった。
やはり冬は来ているのだ。
飛行機の離発着の様子で、風向きがかわったことを知った。
眼には見えない風が、季節を変えに来ていることを知った。
きっと、間違ってはいないと思う・・。
バラ、グラジオラス、カトレヤが咲き、庭の雑草君は新しい芽をだし、元気にお育ちになられている。
樹木は青々としている。
ブラジルの落葉は、冬の枯葉ではなく、季節を選ばずに1年中、古い葉が順番に新芽が出るのを妨げないように、散っているのかもしれない。
きっと、人に新陳代謝があるように、植物にも新陳代謝があるのだろう。
そんな散り方である。
気温はさほど変わらずに、風の方向だけが変わる。
これがブラジルの季節の変わり目と思った。
今月は、またサザンクロスを探すのを忘れてしまった。
今日は日曜日、家の前の自動車の修理工場はお休み。
また、飛行機は離着陸の方向を変え、エンジンの音が遠くに聞こえるだけになり、マチダ家は、教会の讃美歌の歌声だけが優しく流れ、静かな日曜日になりそうだ。
庭先の 見ゆる景色は 変わらねど
風の流れに 季節は巡る
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