風よ伝えて(爺さんのブラジル移住)第583段

18年  


18年前というと、私がまだ、54歳と若い。

  若いといっても、馬鹿な上司(直属ではない)に、窓際族にされていたころのことである。

  この窓際族の件は、このブロブの第231段(40日間日本滞在 その39)で書いてあります。  お時間があれば、お読みください。

  18年前、もう1週間でお盆休みに入るという頃。

  その日も別段、重要な仕事はなく、午後5時。

  退社時間である。

  ぽつぽつと雨が降る中、会社の裏門をくぐった。

  その時、真っ白で、片目だけが青くて小さな、人間でいえば、よちよち歩きをしているような子猫。

  雨の中、小さな声で泣いていたのを覚えている。

  私は、ただ、その猫を、横目でチラッと見ただけで、家路についた。

  お盆休みに入る前の日くらいに、同じ工場で働いていた伯から、相談を受けた。

  ”アパートで、猫を飼ってもいいか‥‥”ということであった。

  よくよく聞いてみると、私が、帰りがけに見た、あの白い小さな猫のようであった。

  伯が、帰りに拾って、アパートに連れていったということだった。

  伯が、動物好きということをその時知った。

  アパートでは、動物を飼ってはいけない・・・・  しかし、伯の言う、可愛そう・・・可愛いい・・・・という言葉・・・・

  ”絶対に、外に出すな・・・内緒で・・・・”と返事をした。

  見つかったら、見つかった時の事・・・・

  そして、アパートで、伯と一緒に暮らすことになった子猫。 

 毎日毎日、伯が会社に行き、帰るのを楽しみに、1っ匹でワンルームのアパートで暮らしていたが、寂しいであろうと、伯は、もう1匹、子猫を飼うことにしたようだった。

   数年がたち、オイルショックで伯は、ブラジルに帰ることにし、その2匹の猫をブラジルに連れて帰った。


   私は、伯とブラジルに来て、その猫と対面した。

  大きくなっていた。

  というより、もう、おじさん。

   昨年、癌が見つかり、左足を切断する手術をしたが、元気でトントンという調子で歩いていた。

   数日前から、元気がなくなっていた。

  そして、昨日、夜9時過ぎ・・・・逝ってしまった。

  18年・・・人間にすれば、90歳に近い・・・大往生であった

  名前は、”ミリン”・・・私がブラジルに来て、漢字の名前にした。

  ”美凛” 

 18年間・・・・雨の中、伯に拾われ、ブラジルに来て、足切断・・・・  でも、伯の愛情を体全体で、受け止めていたであろう・・・・

  安らかに・・・・ 

 伯の膝の上での写真 

 ”リボンをつけているけど、僕、男の子です・・・美凛と言います。”  

 私こと、美凛と同じように、日本で、伯に拾われ、ブラジルに連れてこっれた、野良犬・・・・・なんだ 

  そう、思えてならない 

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