風よ伝えて(爺さんのブラジル移住)第36段

メール

 友やお世話になった人から、メールが届く。

 本当に嬉しく思う。

 遠くに来てしまったのに、日本にいる時より近くにいるような気がする。

 郵便は日本とブラジルでは、エアーメールでも届くのに2週間程かかるが、メールは一瞬に届いてしまう。

 「頑張れ」とのメールがたくさんあり、心を強くする事が出来る。

 ありがたい。

 メールの送り人の今の様子、心の動きが良く判り、届くたびに昔の思い出が甦ってくる。

 過ぎた時間は帰ってこないが、メールの陰にたくさんの思い出が、ちらほら見え隠れしていて読んでいるとメールの主の笑顔が見える。

 ここに来た頃は、「今頃何をしているかなあ・・・」。

 「好きなゴルフでもやってるかなあ・・」

 「好きな旅行でもいっているかなあ・・」

 「好きな釣りでもやっているかなあ・・」

 「会社は忙しいしいだろうなあ・・」

と思ったが、これがとんでもない事と判った。

 

 こちらの生活が始まって1カ月半くらい経った日に、私が勤めていた会社の事務員さんからメールをもらった。

 その中に「こんにちは(そちらはおやすみの時間かな)」とあった。

 あっ、そうか、みんな寝ているじゃん。

 誰も起きてはいない。

 誰も好きな事をしている時間ではない!

 やはり私はボケてきたなあ・・

 みんな寝てるじゃん!

 これは地球の真反対の位置で、「ああ・・・寝ているのか」と思うだけで、「寝ている姿」を思い浮かべることが多くなってしまった。

 しかし、昔の事が思い出される。

 人によっては、幸せの感じ方が違うように、思い出も、人によって思い出される姿が違うかもしれない。

 私の場合は、ある姿が浮かんで来ては、直ぐに他の思い出に移ってしまう。

 色々なことが、グルグルと回っている事が多い。

 頭の中のエンジェルが、あちこちに散りばめられた鈴を鳴らしに、ゆっくりと優しく廻る。

 ランダムに出ては消え、消えてはまた出てくる。

 そんな他愛のない回想が、ベランダに座り外を眺めている時や、寝つかれずにいる時にぼんやりと私を包んでくれている。

 メールの事を思い浮かべ、懐かしい人たちとの1人での対話をうつら、うつら廻らしている。

 有難う、また絶対会おうよ!


     朝となり メール開くの 嬉しけり

           懐かしき人の 今日ある姿が


     走馬灯 とどまりもせず ゆらゆらと

           懐かしきこと 現れ消える

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