風よ伝えて(爺さんのブラジル移住)第22段

街中の市

 あちらこちらで市(いち)が開かれる。

 自宅から2キロほど離れたところで、毎週水曜日に市が開かれる。

 テテに車の運転をしてもらい、伯とミユキと買物に行った。

 町は至るところ、丘陵地である。

 その1つの丘陵地の頂上から坂の下まで、200メートルほどの道路を通行禁止にして、2列に露店が並んでいる。

 道を全て占拠している。

 買物客のスタイルは大体同じで、今はやりの旅行鞄のように、車輪が2つ付いた買物カートをひいている。

 深さが50センチ、奥行と幅が30センチくらいの、パンチングメタル製の買物カートである。

 旅行者のように引っ張って移動している。

 1人1人が別々のカートを引っ張っている家族連れもある。

 この家族は、スーパーマーケットでは買いだめをしていない家族であって欲しい。

 そうでないと、どうしてそんなにストックがいるのか?

 それともそんなにたくさん食べるのか?

 とにかくたくさんの品物を買いこんでいる。

 ここには野菜、果物、肉、魚、衣類、靴、おもちゃ、日曜雑貨などの店と花屋が並んでいる。

 日本には少なくなったバナナ屋が、あちらこちら店を構えている。

 野菜や果物は色々売っているが、なぜバナナだけ売る店があるのか?

 八百屋のような店で一緒に、バナナを売ればいいのに・・。

疑問ではあるが、今日の話はそのことではない。

 他の店のことも書きたいが、このバナナ屋だけを書いておこう。

 バナナ屋は1番大きな声を出して売っている。

 5メートルほどの幅の店を出し、色々な種類のバナナを売っている。

 3ヘアウ(150円)で、20本ほどの実の付いたバナナを一房買ったら、3本おまけをくれた。

 愛想がいい。

 とにかく声がでかい。

 私は伯になんと言っているかを聞いたら、

「貧乏でお金がないから買って。」「売れないと母ちゃんが家に入れてくれないから買って。」「ババナ屋はかわいそうだから買って。」とかである。

 面白おかしく、冗談を言いながら、他の品物を売っている店の客寄せの声より、大きな声で頑張っていた。

 ババナ屋さんは本当にかわいそうなのかも知れないぞ。

 先日、伯と庭のバナナを見てバナナの話をしたが、その時に「バナナは花が1つ咲きその花に10房ほどの実を付ける。

 その実が付くだけで、もう実は付かないから切ってしまう。」

 えっ!そう!バナナは1本の木に10房だけの命なの?

 花は1つしか咲かないの?

 それならどうしてそんなに安いのか?

 そういえば私たち、今、御老体を迎えている者にとっては、バナナといえば昔、御幼少の頃、病気になった時くらいにしか、食べられなかったはずだ。

 病気になっても、食べられるのは、運が良ければの話だったはずだ。

 なぜに そんなに 安くなってしまったのか?

 そういう世の中になったと、言ってしまえばそれまでだが、1度実を付けて切られてしまうと聞いて、本当にバナナはかわいそう。

 横から新芽が出て、また実をつけるが、大きくなるのに時間がかかる。

 店に並べられたバナナの本数からは、想像もつかないバナナの木と、畑の広さと労力がいるのではないか?

 ブラジルは広いだけで解決してしまうのか?

 もう少し値段を考えてあげたら・・。

 そう思った。


 買ってくれと 大声あげる バナナ売り

     母ちゃん怖さは どこも同じよ


     頑張ってや! おっさん!

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