風よ伝えて(爺さんのブラジル移住)第14段

銀行

 年金を振込んでもらう口座を開くために、伯とテテ君と3人で、グラルーリョスの中央にある銀行へ行った。

 銀行の建物内部は、入るとすぐにキャッシュコーナーがあった。

 キャッシュコーナーの前には、10人程の人が並んでいた。

 その奥に、回転式ドアーがあり、警察の様な制服と帽子の警備員が見張っていた。

 怪しい物を持って入らないように、見張っているのだ。

 入店する客は、持っている物や、身に付けている物の中で金属性の物は所持品から取り除いて、回転式ドアーの横にある、透明のプラスチックで出来たポストの中に入れてから、回転式ドアーを通る。

 そして入った後に、ポストに入れた金属物を取り出し入店する。

 私は時計とキーホールダーをポストに入れ無事通過した。

 他にもう1人、部屋の仕切りの上部から顔を出し、部屋全体を警備している。

 ただ、睨みつけるような怖い顔はしてはいなかった。

 銀行の内部は、日本の銀行とは違い、全く銀行らしくない。

 普通の事務所のようだ。

 壁には家を建てたり、自動車を買ったりする時に申し込む、ローンの宣伝であろう。

 ポルトガル語がわからない私でも、それとわかるような掲示物である。 

 日本の銀行には、預金の種類やその利率が表示されているが、それらしきものは、何処にもない。

 行員は制服でなく、私服である。

 新規の口座を開くには、ブラジルに来て最初に申請した身分証明書のRNEとCPFを提示し、本人確認がされた。

 伯が、私に変わって色々な質問を受け、それに答えていた。

 新しく口座を開く目的は、「年金の振込のため。」と、伯が説明した。

 目的がはっきりしないと、口座開設ができないようだ。

 しかも、新しく開く口座だけでなく、全ての口座は、例えば、私と女房とか、2人の連名の口座となる。

 これは片一方の口座名義人に、何か問題が起きた時には、もう一方の口座名義人が責任を負う、或いは、相続の問題のためなのか?

 口座開設の書類はA4の用紙が10枚ではきかない。

 数えてはいないし、読めるはずもない。

 何ヶ所もサインをする欄があった。

 私は漢字で、何度も署名をした。

 契約書である。

 なにもそんなに細かい契約書を作らなくても、預金通帳をさっさと、発行すればすむじゃん。

 20ヘアウ(日本円で百円位)を入金して口座開設の手続きを終えた。

 20ヘアウの領収書が発行されただけであった。

 「・・・・・・・。」

 驚くことなかれ!

 預金通帳は発行されない!

 「・・・・・・・。」

 口座の取引と残高はインターネットで見るとのこと。

 インターネットを使っていない人はどうするの?

 キャッシュコーナしか見ることが出来ないのか?

 それでことが足りるの?

 私にはさっぱり判りません!

 世界中の銀行がどうなっているか知りませんが!

 本当にこれでいいのか心配です!

 日本の田舎者の爺さんですから!

 帰りしなに、トイレに行きたくなり、テテ君にそのことを話したら、テテ君はカウンターに行ってトイレの鍵を借りて来た。

 トイレの場所を教えてもらい、錠を開け、トイレに入り、すっきりしてまた錠を締め、鍵を返し銀行を去った。

 一体、どういうことだ!

 俺にはさっぱり わ・か・ら・ん・ぞ !

 遠く来て 年金暮らし 始めたり

    妻と2人の 口座をひらく

グラルーリョスの街は、坂道だらけで、歩くのになかなか、しんどい。

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