風よ伝えて(爺さんのブラジル移住)第13段

グアルーリョスの街

 ここは山奥であった。

 大きな木を切り倒し、切株を掘り起こし、畑を作り、道が出来、家が立ち並び、町ができた。

 そんな、感じである。

 遠くには山並みが見え、朝霧がかかる。

 グアルーリョス市は、サンパウロ市の北東側の隣街である。

 グアルーリョスの街中では、日本らしい風景は何処にも見当らない。

 歩道には、タバコの吸殻やゴミが散乱している。

 スーパーのレジ袋、食べ物の包み紙、ダンボールと様々である。

 ゴミ箱が、歩道のあちらこちらに備え付けてあるのだが、歩道に捨てる人が多い。

歩道はゴツゴツで、足元を見て歩かないとこけてしまう。

 山の中を徐々に開発してきた町だから、坂道だらけで、平坦なところといえば高速道路だけなのか?

 私が日本で最後に過ごした愛知県東浦町も、急な坂道の多いところだったが、こことは比べ物にならない。

 街中がジェットコースターである。

 或るところは、山道のヘヤーピンカーブのように曲がったと思ったら、家並で隠れていたその先が、スキー場のゲレンデのように、下っていくのを発見する。

 また、他の場所では、坂道を下って行き、少し平坦なところにさしかかったところで、前方を見ると、また坂になっているのだが、その坂の下が全く見えない。

 下って行く自動車が、急な坂道のために見えなくなり、前方に見えるのは、その坂道を下った後の上り坂である。

 その上り坂まで来ると、再び消えた自動車が見え出す。

 そんな坂道の街であるが、たまに自転車を使っている人を見かける。

 落書きが、商店やマンションの壁や高速道路の擁壁に、それこそぎっしりと書かれている。

 到底書くことのできない高い壁にも、大きな落書きが、暗号(?)で書かれている。

 伯に聞いたら、誰も書けないような処に描く競争で、暗号みたいな文字(?)の意味は、書いた人しか判らないという。

 日本でもあちこちでやられている落書きと同じものだ。

 間違いない!

 土は赤く、その土で焼いた瓦も壁のレンガも赤い。

 その赤い風景が、遠くに見える山々の裾まで連なっている。

 まるで、謎の赤い要塞が丘陵地の麓から、頂上まで続いているように見える。

私が少年であったなら、片手に地図、もう一方にランプを持って、赤い要塞制覇の探検に出かけたい気分になっているであろう。

 街中は、20階もあるアパート(日本ではマンション)が建ち並び、商店街は白っぽい色の建物が多く、赤い色はだんだんなくなってきているようだ。

 街路樹が多く、広い公園がたくさんある。そこに茂る木は、日本のあちこちにある神社の御神木のように、太くて背の高い木が多く、葉の色は日本の葉の色より濃いものが多い。

 繁華街には、デパートのような大きな商店はなく、小さな商店ばかりである。

 日本にあるチェーン店では、マクドナルドがあるだけのようだ。

行き交う人は多く、賑わっていて活気がある。

最も活気のある商店街の通りは、遊歩道になっている。

そして、町中の歩道では、歩道に商品を並べ、商売をしている。

街角で、ペルーの楽器で「コンドルは飛んでいく」で有名な、サンポーニャを演奏しているグループが、何時も一緒の場所で演奏しているのを行くたびに見かける。

少しの時間だが、立ち止まって聞いていると、何ともいえない心地よさを感じる。

 だんだんと、グラルーリョス市の中が判り初めてきた。

 バス停、銀行、郵便局、スーパーなどが何処にあるのか判ってきた。

 いつか、1人で来ることが出来るようになるかも知れない。

 私がお世話になっているのは、グラルーリョスの繁華街から車で20分ほど東北へ行った街はずれである。

 公園の 木陰で休む 人々に

    サンポーニヤの音 清く流れる

伯が言うには、街中で写真など撮っていると、「カメラを狙ってタカリが来そうだから、気を付けて、早く撮ってしまおなさい。」とのこと。

恐る恐る、シャッターをきった。(グラルーリョスでの初めての写真)

坂道、そして歩きづらい歩道。

商店など、いたるところ、落書きがしてある。

歩道での物売り。

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