風よ伝えて(爺さんのブラジル移住)第330段

突如買物一人旅(3つの出来事)


 伯の電話が鳴り、DAIKITTY(我が陣営の屋号)に巻きずしと稲荷寿司、そして餅の注文が入った。

 材料に不足するものがあった。

 毎年、伯の伯母さんの家でクリスマスのパーティーをしていたが、今年はマチダ家でやることになっていて、伯は忙しい。

 グアルーリョスの日本料理の材料を売っている店は、リベルダージの店より売値が3割くらい高い。

 そんな訳で急遽、爺さん1人でリベルダージまで買い物に出かけることになった。

 バス、地下鉄で往復2時間半くらいである。

 もう夏。

 長袖はいらない。

 リョックサックに傘だけ入れて、家を出た。

 朝11時半、バスに乗る。

 乗客は少なく、座ることが出来た。

 少し辛抱して読んでください。

 リベルダージに行くときは、いつもバスはアルメニア行のバスに乗るが、途中のポルチュゲーザ チエテ(以下、略してチエテ)で降りる。

 これは、リベルダージの地下鉄駅にはトイレはなく、リベルダージの通りもトイレがなく、困るのです。

 アルメニアやチエテの駅にはあるのですが、アルメニアは汚く、それに比べ、チエテは衛生的であるから、チエテ降りる。(辛抱、終わり、オブリガーデン)

 

 今日もチエテで降りて、上りのエスカレータ(地下鉄ではあるが、チエテやアルメニアの駅は、地上にあり、しかも、高架駅である。アルメニアから終点までは、高架線。)に乗るため、列に並んだ。

 私の前には、わっぱの付いた旅行鞄を引きながら、50歳くらいの小柄で小太りのおばさんが並んでいた。

 おばさんがエスカレーターに乗る番が来て、旅行鞄を後ろに引き、エスカレーターに乗ったのです。

 ところが、旅行鞄が後ろにあり、旅行鞄がうまくエスカレーターに乗らなかった。

 おばさんは2段目くらいまで進んでいたので、旅行鞄が体からだんだん離れ、おばさんが必死で旅行鞄を引っ張ったが、旅行鞄は、頑固に動かなかった。

 おばさんは、エスカレーターの動いている中で、後向きに倒れ、旅行鞄は、置き去りにされた。

 おばさんは、倒れたまま、起き上がれずに、エスカレーターで上がっていった。

 私は、エスカレーターの乗り口の置き去りにされた旅行鞄を前に、どうしてよいやら・・・・・。

 周りの人が騒ぎ出し始めた時、エスカレーターが止まった。

 私の後ろから、1人の若者が駆け足で止まったエスカレーターを上り始めた。

 エスカレ^ターの中ほどにいたおばさんのところにたどり着き、転んだままのおばさんを起こし、上に連れていき始めた。

 私は、おばさんの旅行鞄を持ち、止まったエスカレーターを1段づつ上り始めた。

 重いこと、30キロから40キロくらいあり、おばさんが持ち損ねたことが分かった。

 1段、1段・・・・・1段づつ、重い、重い・・・・・。

 上に着いたときは、助けた若者と一緒にいたおばさん・・・・安堵の様子。

 旅行鞄をおばさんに渡し、握手し、おばさんの肩を優しく、トントンした。

 言葉はない。

 1つ目の出来事。

 チエテでの用事を済ませ、地下鉄に乗るため、改札口を通ると、地下鉄が止まっていた。

 急いで乗ろうとしたが、ドアーが閉まり始めたので、乗ることを止めた。

 その時、地下鉄のドアーの近くに乗っていた、赤いTシャツの黒人の若者が、ドアーが閉まるのを止め「乗れる」と言っているようだったが、私は、人差し指を横に振り、乗るのを止るのを告げた。

 危ないから・・・・。

 若者は、ドアーから手を離すと、ドアーが閉まり、ゆっくり動き始めた。

 私は、若者の方を向き、右手の親指を立て「オブリガード」

 若者も、笑顔で、同じしぐさ・・・・・・。

 言葉はない。

 2つ目の出来事。

 次の地下鉄がホームに入り、ゆっくりと乗ることが出来、老人用の椅子に座ることが出来た。

 濃い青色と薄い青色のシートがあり、薄い青色が老人、身体障碍者、妊婦、子供連れ専用になっている。

 チエテの次のアルメニアの駅に着き、ここで、80歳くらいの老婦人が乗ってこられた。

 椅子の空がない。

 とっさに私は、老婦人に席をゆずるため席を立った。

 老婦人の肩をポンポンと叩き、座ることを促した。

 そして、老婦人は席へ。

 非日系の眼鏡をかけた、ワンピースが清々しい小柄なおばあちゃん。

 言葉はない。

 3つ目の出来事。

 どうですか、言葉がなくとも、爺さん、結構、活躍しているんです!!!

 まだまだ「日ブラ人」ですが・・・・・・。

 

 リュックサックにゴボウ1束、12枚入りの油揚げ5袋がリュックサックに詰められ、岐路の地下鉄へ。

 地下鉄はガンガンに冷房が効き、寒いくらい。

 それに比べ、地下鉄を下りてから乗るバスは冷房がない。

 10人くらいの乗客を乗せ、高速道路を我が物顔で、超スピードで走る。

 風は、心地よい。

 そんな中、用事を済ませ、爺さん、無事、家に帰りましたとさ。

 今日、帰りのバスの中から、爺さんがみた、ブラジルの初夏の空です。

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