風よ伝えて(爺さんのブラジル移住)第259段

10月の風(2015年)後段

 金木犀の 香りとともに 大海を 渡り来るなり 祭りの囃子

 

 雲1つない春の空に、砂埃が高く舞上がり、女の子も交じり、子供達の歓声が聞こえる。

 1周400メートルほどの広い馬場の中で、ボールを蹴って遊ぶ沢山の子供達。

 さすが、フッチボールの国だけあり、ボール蹴り遊びがほとんどであった。

 10月12日、バラフンダ、アグアブランカ公園の子供の日、フェスタ、3日目であった。

 それこそ。数えきれないくらいの人が、公園に押しかけていた。

 子供の日。

 でも、鯉のぼりはなく、子供の日とわかるのは、子供連れの家族の多さ以外には何もなかった。

 日系人が主催していたなら、鯉のぼりを掲げていたであろうと思った。

 たくさんの人。

 私たちの店の前は、人の波で、ごった返していた。

 でも、その中に、日系人の姿は、皆無に等しかった。

 「エスペリメンタ。」と、相変わらず、爺さん、店先を歩く人に、試食を誘う。

 人、人、人。

 それなのに、ちらっと、横目で見るだけで、反応は薄かった。

 

 全く、売れない!

 このアグアブランカ公園のフェスタに初めて参加した、1ヶ月前の土佐祭りとは、売れていく姿が、全く違っていた。

 不景気ということではあるが、それにしても売れない!

 子供の日ということで、ベベパンダ焼きをチョコレート仕立てで作り、店に並べた。

 全く、買ってもらえない。

 私の考えた作戦は、全く機能しなかった。

 あちらこちらの子供を見ると、綿菓子、ポップコーン、イチゴにチョコレートをかけた菓子、リンゴ飴、食べ物以外では、ヘリュームガスの入った風船、ピストルなどのおもちゃを持っていた。

 「ベベパンダ焼きのチョコレートなど、なくても、楽しむものは、他に沢山あるよ。」と言っているようであった。

 不景気ということで、「不景気の中、たくさんの人に買ってもらいたい大作戦」は、続行している。

 しかし、売れたのは、伯が作ったカボチャやパパイヤのコンポートだけであった。

 2日目で、カボチャの方は完売、3日目で、パパイヤも完売できた。

 でも、コンポートの単価は、大作戦の中、2ヘアウと抑えていて、売れても売上は少し伸びるだけであった。

 鯛焼、漬物は、日系人以外の人たちには、なかなか買ってもらえなかった。

 店の前を歩くのは、非日系人のお客さん。

 だめだ・・・。

 出店して初めての採算割れであった。

 土佐まつりの日に、「あれ!ちょっとピリピリしすぎじゃないの?」などと言いながらも、ピリカラ漬けを買ってくれた日系のおばちゃん。

「鯛焼・・・・・久振りね・・・。」と言って買ってくれた日本で働いたことのある娘さん。

 1ヶ月しかたっていないのに、すでに恋しいではないか・・・。

 どの様に、非日系人の客に、鯛焼、漬物を売るのか、大きな課題にぶち当たった。

 テンプラ、焼きそばなどは、非日系人でも食べてもらえるまで、ブラジルの社会に溶け込んでいる。

 鯛焼、漬物はその足元までもたどり着いていない。

 どの様に、解決していくのか・・・。

 「ZEROからの出直し」である。

 庭に、2本の桃の木を植えた。

 グランドカバーで毎月、少しずつ植えてきた「Grama Amendoim(ピーナッツの芝草)」がだんだんと庭の表面を覆いだした。(Grama Amendoimのサイトに写真が載っています。)

 小さな黄色の花をつけ、美しい。

 8月に種を蒔いたキュウリは、小さなプランター(直径20センチほど)で実をつけ、その実が20センチもある大きなキュウリとなった。

 牛糞の効果と、太陽のおかげと思う。

 しかし、1本の苗からとれたのは、数本のキュウリだけであった。

 もう、少し枯れてきている。

 半分成功、半分失敗というところである。

 今度は、どのようにしようか、試案中である。

 大きなプランターは、値段が高すぎて手が出ない・・・。

 私が、ブラジルに来て、庭の草取りを始めた頃から、すでに庭で遊んでいた2匹の小鳩、「ポッポとクック」。

 私が草をとると、そのあとを2羽で地を啄み、たまたま、私と顔を見合わせていた。

 そのどちらか1羽を、10月20日頃から、見ていない。

 1羽だけが、私の後についてくる。

 1羽は、大宇宙に帰ってしまったのだろうか?

 でも、1羽になっても、そのしぐさを見ていると、しっかりと生きている。

 「頑張れ!ポッポ。」

 真っ赤な薔薇、そして、庭木に巻いた胡蝶蘭にハチドリが近寄り、花蜜を飲んでいる。

 来年2月の私の古希の誕生日までには、庭を完成させる予定であったが、間に合わないのが見えてきた。

 それでも、ゆっくり、ゆっくり庭を作っていこうと、思っている。

 楽しみながら・・・。

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