風よ伝えて(爺さんのブラジル移住)第248段

 序の章 〆

 ブラジルになれてきました。

 一度、〆ておきます。

 朝9時に起床。

 朝飯を取らずに、2階にベランダに座った。

 マチダ家の東側の丘を越えて、太陽が庭を、照らし始めていた。

 空は、紺碧で高い。

 冷たい南風が、私を包んでいた。

 清々しい南風。

 この南風、街中を大きなエアコンの効いた部屋に替えていた。

 穏やかな正月の朝を迎えた。

 恒例の大晦日のパーティーを終えて帰宅したのが、朝方3時を回っていた。

 24日のクリスマスパーティーも、同じような帰宅であった。

 ただ、パーティーの内容は、前回と変わりはなかった。

 新しく、書くことは何もなかった。

 渡伯し、1年と8ヶ月。

 もう、フライパンの中のポップコーンは、爆発することもなくなった。

 12月中旬に、日本の友に年賀状を書き、郵便局に行った。

 「切手が大きくなり、貼ることが出来ないので、受付できません・・・。」だって。

 この前まで、何も問題が無かったのに、急に・・・。

「そうですか・・・。」

「ここはブラジル」・・・。

後日、封筒に入れて、再度、郵便局に行き、無事に年賀状を送ることができた。

また、「タトゥー」を入れた、若者と街ですれ違っても、今は別段の怖さはなくなった。

バス停で、バスを待っている時などに、話しかけられる。

時間を聞いてくることが多い。

時計を見せる。

「オブリガード」とお礼を言われる。

もう、おどおどしてはいない。

私の知るブラジルでのことは、伝わったと思う。

書いている爺さん、「日ブラ人」になってしまい、ビックリすること、珍しいことが、普通の事になって来ているようだ。

ブラジルの社会にどっぷりと浸かり、もう、心配はない。

風さんにお礼。

風さん、書かなくてもよいことまでも、書き、伝えたくないこともあったと思います。

でも、心のおもむくまま、書きました。

遠い日本まで、届けてくれて感謝、感謝。

「オブリガーデン。」

「風はおふくろ」

また、明日からは、草取り開始。

何時完成するかわからない庭。

ノッサ セニョーラ アパレシーダの教会の建築がまだ、続いているように、私の庭の作業も、何時までも、続けよう・・・。

おふくろのお父さんが、私を励ましてくれる。

「負けるな・・・。」と。

草取りをしていると、励ましの声が聞こえる。

手を休め、空を見上げる。

「頑張れ」の声が聞こえる。

「シャボン玉」がもうすぐ、届くような気がする。

デトロイトに住む孫に送った「シャボン玉」。

小さなお口で、一所懸命「ぷー」とふくらました「シャボン玉」。

風に乗り、我が庭に着くのを、楽しみにしてるよ・・・。

車。

もう、何処へでも行ける。

「ホンダ、フィット」に乗り換えた。

私が日本で乗っていたフィットと全く同じ。

ハンドルが右か左かの違いだけで、内装は、全く同じである。

シートの仕様も全く同じ。

外装は、日本では青色であったが、今度は赤色で、サイドモールが付いている。

フィットは、おふくろを乗せ、桜見物、お祭り、丈山苑、デンパークなどへ一緒に行った。

伯と一緒に「田舎暮らし」の場所を見に行った。

1日の仕事を終え、最寄りの駅まで、事務員さんを送って行った。

沢山の想い出のある車、「フィット」。

そんな「フィット」にまた乗ることが出来た幸せ。

ブラジルを果敢に攻めてみようではないか・・・。

ブラジルでの私の生活。

もう、伝えなくても、わかってもらえたと思う。

ブラジルにきた目的を忘れずに・・・。

まだ、1年と8ヶ月しか経っていない。

でも、もう大丈夫。

心配ないよ。

近頃、就寝時に「YOU TUBE」を開く。

そして、懐かしい音楽を聴く。

「忘れな草をあなたに」「惜別の歌」「さくら貝の歌」「浜辺の歌」など、聴きながら寝入ってしまう。

今、郷愁を覚えるに1番の曲になっている。

懐かしい人、懐かしい風景。

思い巡らす。

私がこの手記を書くきっかけになったのは、ブラジルに来て、私のもとに初めに届いた、鎌倉に住む兄の手紙であった。

ブラジルに来る前に兄から貰った手紙に、2首の和歌があり、そのお返しに、私が兄に、1首詠んで送った。

これを書いておこう。

 兄の2首

    弟よ もう会うことも なきものと

       君を恋う日々 命のかぎり

    君の行く ブラジル遠し 良き妻と

       君の命は 光り輝やけ

 

 お返しの私の1首

    はらからの 別れの和歌が 我が胸に

       時は行くとも 忘れなきぞや

友よ、ありがとう。

また、何時か、会おうぞ!


    何時までも 知らせおくれ 風たちよ

       懐かしき人の 健やかなるを

2015年1月1日

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