風よ伝えて(爺さんのブラジル移住)第218段
40日間、日本滞在(その26)
さんまが食べたい
夕方6時過ぎ、眼を覚ます。
「えっ、何でここにいるの?」
枕元には、半分空になった一升瓶。
焼酎が入っている。
頭は、そんなに痛くはなかった。
「あれ、またやってしまった・・・。」
ブラジルに行く前の桜の酒宴で、帰りに磯田君と飲み、記憶が無くなって以来の「やってしまった。」であった。
全く記憶がない。
伯は、テレビを見ていたが、見るのを止め、パソコンの「マイピクチャー」のサイトを開けた。
伯は、笑いながら楽しそうに1枚の写真をファイルから取り出した。
私が眠っている間に、伯が撮影したものであった。
それは、泥酔した爺さんが、説明してはいけない格好で写っていた。
「やい、やい・・・。」
でも、もう遅い。
撮影されてしまったのだから・・・。
今日の朝からの出来ごとを書いていこう。
この日は、快晴でウオーキングすることができた。
「神島」から帰った次の日であったので両足の腿とふくらはぎが痛い。
それでも、爺さん、頑張った。
快晴の空、気持がいいではないか・・・。
野辺には、真っ赤な「曼珠沙華」が咲き、足の痛さを緩和させてくれた。
何べんも書くが「曼珠紗華」は美しすぎる。
アパートに帰り、コーヒーとパンとヨーグルトの簡単な朝食。
8時になり、東浦イオンに買物。
「さんま」「味の開き干し」「牛肉」「ビール」などを仕入れた。
今日は、進一君と鈴香さん夫妻の家で、バーベキューをする事になっていた。
だから、「神島」で干物を買って帰りたかったのであった。
進一君は、同級生で誰彼と差別を付けずに交友関係をもつ爽やかな人物である。
今度の古希の旅行には、体調が悪いということで参加できなかった。
剣道三段の腕前である。
そして、私の東浦時代の野菜作りの先生でもあった。
鈴香さんは、古希の旅行で、私とデュエット曲でない曲をデュエットしてくれ、95点の高得点を出した歌姫なのです。
同級生同士のカップルである。
バーベキューをすることになったのは、私が借りたアパートでは、焼魚をするには、コンロか、魚焼器を揃えなくては作ることができない。
先日の事。
進一君と鈴香さんそして、伯と私で再会を祝し、居酒屋で一席設けた。
その時、私が「さんま」を食べたいと言ったら、進一君の家の庭でバーベキューをやろうということになったのであった。
その日が今日であった。
10時に鈴香さんが、アパートまで車で迎えに来た。
アパートから、半田の進一君の家まで5分くらいで行ける。
進一君の家に到着した。
この日は日射しが強く進一君は、竹竿にビニールシートを掛けていた。
私は、それを手伝い、日差しを遮る屋根ができた。
さあ、炭をおこし、バーベキューの始まりであった。
新聞紙に火を付け、枯枝、炭と順番に火が付いていく。
日本の炭は、ブラジルの炭より固かったが、うまく火を付けることができた。
そして、食材を網の上にのせた。
テーブルの下の桶の中には、進一君が進一君の畑で作った「キュウリ」が冷やされていた。
塩を振ったり、味噌を付けたりして食べた。
新鮮で硬く、「ポリッ、ポリッ。」と言う歯ごたえがたまらなかった。
ブラジルのスーパーで売っている「キュウリ」は、軟らかくポリポリ感が薄らいでいる。
進一君が作った「キュウリ」をブラジルで作り「ピリカラ漬」に使いたい。
自分で作ることを念頭に置いた。
お漬物など、日本でなければ食べられない物があった。
飲み物は、ビールで始まったが、途中で進一君所有の珍しい焼酎(銘柄は憶えていない)に変わった。
美味しいではないか・・・。
どんどん、飲んでしまった。
そこまでであった。
「さんま」を食べたのか、食べたような気がする・・・。
「あじの開き」など、記憶にない。
ただただ「キュウリ」のうまさが記憶に残っているだけ。
夕方6時、眼を覚ますと、枕もとに一升瓶、半分空になっている。
「俺、どうしてた?」と伯に聞く。
「進一君と、野菜の話をしていたよ。」
「なにか、おかしな事言ってなかったか?」
「別に、おかしなことはなかったよ。」
よかった。
「キュウリ」の美味さは、記憶にある。
でも、肝心の「さんま」の味は、記憶にない。
「しょうがだまり」であったのかさえわからない。
でも、爺さんのこと、きっと、「美味しい、美味しい」って食べたと思っている。
なんでも美味しいと食べるじいさんであるから・・・。
進一君、鈴香さん、ごめんなさい。
でも、忘れないよ、進一君、鈴鹿さんの仲の良さ。
そして、進一君とは後日、大府市にある「げんきの郷」の温泉に2人で行き、ゆっくりと温泉に浸かることができた。
ゆったりとした、温泉の思い出はまた、ゆったりとし、脳裏に浮かぶことであろう。
「さんま」の味、記憶にない。
でも、美味しく、今もその美味しさが甦る・・・。
日本に帰り、念願の「さんま」を私は、間違いなく、食べている。
酔いしれて 食べるさんまの 味如何に
記憶なくとも 美味さ残れり
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