風よ伝えて(爺さんのブラジル移住)第154段

完売できず

 3月6日、日曜日、朝7時。

 空には、うろこ雲がぽこぽこと浮かび、爽やかな南風が樹々をゆったりと揺らしていた。

 テテ、伯、そして私の3人で出掛けた。

 丘陵地の急坂を登ったり、下ったり。

 「なんだ坂こんな坂、ぽっぽー」の気分で、快調なペースで、フィアットは走った。

 途中の細道で、後の車に「ブーブー」と警笛を鳴らされた。

 「ジグザグ運転はいかんよ!」と言われたようだ。

 2車線なのか、1車線なのか、白いラインは消えているのか?

 ブラジルは、ラインが消えているところが多い。

 特に、幹線道路でない細道などに多い。

 20分ほどで、サンパウロの東の郊外にある「サンミゲル」の「サンミゲル パウリスタ文化体育協会」に事故もなく到着した。

 私の初めての遠出での運転であった。

 テテに注意されながらも、事故を起こさずに到着したことは、すばらしいことではないか・・・。

 日本での45年の運転歴の証でなかなかのものであった。

 今日の出店の目的地である「サンミゲル パウリスタ文化体育協会」の前には、スズラン灯、赤い鳥居、赤い橋を設置した、リベルダージを思わせる500坪ほどの公園が、建物の前に広がり、人々の憩いの場となっているようだった。

 バザールが開かれる建物の内部は、何処の会館も同じような造りで、舞台付きの体育館で、広さは、に百坪ほどで広くはなかった。

 出店は、20店ほどでバザールとしては、小さい方であった。

 乗ってきた車でテテが帰って、伯と私で1メートル幅のテーブルを飾り、商品を並べた。

 今日、持ってきた物は、鯛焼を100個、ミニパンダ焼を100個であった。

 先のリベルダージの反省で、焼き具合を一定にするという課題を持って準備した。

 焼き具合は、リベルダージの時に比べ、良くなっている。

 それは、金型を温めるに、今までは強火で、急激に温めて焼いていた。

 それを止め、弱火でゆっくりと金型を温めてから焼き始めた。

 金型の温度分布が一定の温度になるようにした。

 あとは、タイマーを使い、じっくりと焼いた結果は、先回に比べ、格段に良くなった。

 課題を一つ、1つクリヤーしていこうと思う。

 もう1つ、今回で試してみたいと思ったのは、売値であった。

 値上げをしてみた。

 いくらまでなら、買ってもらうことが出来るのかへの挑戦であった。

 

 営業時間は、9時から16時半までであった。

 小さなバザールで、開店しても客はまばらであった。

 巷で開かれているバザールの朝は、こんな状況のようであることがわかってきた。

 11時半頃から、客が入り始めてきた。

 客が店の前を通ると、私は「エスペリメンタ」と声をかけた。

 カスタードとあんこの試食品を進めているのである。

 「オブリガーデン」ともう1つのポルトガル語で頑張っていた。

 先日のリベルダージで、お孫さんにお土産にミニパンダ焼をかってもらった老婦人が来店して、また買ってもらった。

 「パーティーで使いたいから、100個だったらいくらになるの?」と聞いたご婦人。

 値段と電話番号は、知らせておいた。

 「あら・・・。鯛焼? もう、あちらの店でどら焼を買ったのよ。」なんて。

 他の店でどら焼を売っていて、同じ個数で、売値が鯛焼寄り2ヘアウも安く売っていた。

 しかし私は、鯛焼を安くはしなかった。

 今日は、設定した値段で売ることが出来るかどうかのトライであったから。

 今日、車の運転で、「なんだ坂こんな坂・・・。」と頑張ったと同じように、「エスペリメンタ。よっこらしょ(これは心の中の言葉)」と声をかけ、鯛焼は、2時四40分に完売することが出来た。

 3時半を回った。

 客が殆ど来なくなった。

 「焼きそば」を売る店は、2個を今迄の1個分で、2個をセットで売り始めた。

 3時四45分。

 店じまいを始める店があちらこちらででてきていた。

 当店は、売れ残っているのは、ミニパンダ焼が10個であった。

 頑張れ!

 「エスペリメンタ」と言いたいが、客がいない。

 4時を回り、出店は帰り支度。

 伯と私も、店仕舞。

 完売とは、いかなかった。

 残ったミニパンダ焼は、私たちの店の近くの売子に配った。

 販促費用で良い。

 しかし、課題は残った。

 1日は終わった。

 その中で、ブラジル鯛焼情報が入ってくる。

 その1つ目は、私と伯がブラジルに鯛焼を持ってきたよりも前に鯛焼はブラジルの地を踏んでいたようだ。

 リベルダージのブンカマツリで、鯛焼に出店があると聞いていたが出店していなかった。

 しかし、それは私がいつもリベルダージに行くと歩いている商店街の道筋とは違った場所で、鯛焼を焼いている店があると、客の1人が教えてくれた。

 その店が、ブンカマツリで出店を考えていたのか・・・。

 それは、わからないことである。

 いつか、その店に行くことが出来るかも知れない。

 もう1つは、客の中に、「私は、鯛焼、パンダ焼、たこやきの金型を持っている。

 日本から持ってきたが、1度も使っていない。

 新品だが、買ってくれないか。」と言って、電話番号と名前を書いて伯に渡した客がいた。

 なんやかんや、ブラジルで鯛焼をやってみようとしている、または、やってみようと思った人がいたのだ。

 しかし、そんなことは、遠くの空に置いておけ。

 「美味い物を焼け!」

 それだけ・・・。

 

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