風よ伝えて(爺さんのブラジル移住)第80段

赤い薔薇の名前


 今日も、草とりであった。

 朝7時半ごろの出来事である。

 太陽が昇って来たところで、まだ清々しさが残っている。

 「サビア」が、かわいい声で鳴いている。

 「ハクション、ハクション・・・・・・。」

 私は「クシャミ」を五回してしまった。

 サビア君が、鳴き止んだ。

 びっくりしたのか。

 「ちょっと、今、求愛中なんだから、静かにしてくれないか!

 ムードをこわさないでくれ!」

 サビア君は、心でこう言ったであろう。

 そして、羽ばたいていかずに、数秒後にまた、鳴きだした。

 きっと、近くにサビア君のマドンナがいるのだ!

 「すんません。静かにします。」

 サビア君、求愛、頑張ってね。

 庭の様子がだんだんと、変わってきている。

 桑の樹は、相変わらずである。

 赤紫色の実をたくさんつけている。

 小鳥たちと、私が実をもいで、食べている。

 紫陽花は、花が終わり、枯れかかった花を新芽の上で切り落とした。

 次もまた、綺麗に咲いてと、思う気持ちで。

 6本のマナカ ダ セーラは、まだ、可憐に咲き競っている。

 そして、赤い薔薇が、次々と咲きだし始めている。

 赤い薔薇の名前は何というのだろうか?

 

 日本での薔薇の思い出は、可児市の「花フェスタ記念公園」、名古屋市の「鶴舞公園」に行ったことを思い出させる。 

 「花フェスタ記念公園」では、「美智子妃殿下」か、それとも、「雅子妃殿下」のどちらかの妃殿下の御名前の薔薇が、特別の展示場所に、飾られていたことを思い出す。

 15年ほど前のことであるが、どちらの妃殿下の御名前であったのかを、思い出すことができない。

 「鶴舞公園」の想い出を書いてみよう。

 45年ほど前の想い出である。

 私がまだ、学生であった頃のことである。

 「鶴舞公園」の「薔薇園」ができて、間もない頃のこと思う。

 薔薇の苗は、まだ小さく、本数も今のように多くはなかった。

 まだ「薔薇園」を作っている最中であったかもしれない。

 

 私は、生意気にも、鶴舞公園でデートをしたのである。

 私のかわいいマドンナとである。

 

 私は、名古屋の何処にデートコースがあるか知らなかった。

 そんな田舎者だったんです。

 私が通っていた大学が、鶴舞公園の隣にあり、公園の様子は大体知っていたので、デートコースとして選んだだけのことであった。

 

 それでは、 想い出を綴ります。

 昼下がりの公園であったことは、憶えている。

 私と、私のマドンナは、残念ながら、手はつないではいなかった。

 残念。

 というか、まだ、「ウブ」なのであった。

 私が先に歩き、マドンナは私の後について来ていた。

 普通に会話ができる距離であったと思う。

 薔薇園にさしかかり、私は、薔薇の苗の間をすり抜けた。

 マドンナも同じように、すり抜けようとした。

 その時、「あれ!」という声に、私は振り向いた。

 薔薇のトゲが、マドンナのスカートの裾に悪さをしたのであった。

 私は、薔薇のトゲを叱り、優しく、マドンナのスカートの裾からトゲを外した。

 「そんなことしたら、あかん。」

 薔薇のトゲに言い聞かせた。

 私のマドンナは、身を少しよじって、頬を赤らめ、恥ずかしそうに、小さい声で、「ありがとう。」

 このデートの想い出は、これだけで、他には憶えていることは何もない。

 このシーンだけが、心に残っている。

 なまめかしいシーンだけが。

 このような「青くて、なまめかしい」思い出は、私だけでなく、誰にもあると思う。

 青春の切り取られた大切な「玉手箱」である。

 薔薇のトゲ君を叱ったけれど、本当は「ありがとう」ですぞ!

 どうして15年前のことが思い出されないのに、45年前の事がはっきりと思いだされるのが不思議だ。

 

 おっと、話がずれてしまった。

 赤い薔薇の名前の話であった。

 赤い薔薇は150種類あまりもある。

 マチダ家の5匹の犬、3匹の猫、みんな雑種という取り扱いである。

 動物には、雑種というのがある。

 植物には、開発した人に新しい名前を付けられている。

 雑種ということがないようだ。

 もっとも、今は新しい犬も植物と同じように名前があるようだが。

 このようなことだから、人気のある薔薇は、種類が多くなったのであろう。

 今、丁度、マナカ ダ セーラの前に移植した薔薇の根元の草とりをしている。

 薔薇が何時も、私の顔の近くにあり、見つめながら草とりができる。

 この庭の赤い薔薇は、「カルメン」の踊りに使われているような、情熱的で妖艶な「赤い薔薇」ではないことに気付いた。

 花びらが、とがっていない。

 この庭にある薔薇の花びらは、丸くかわいらしい感じである。

 インターネットで「赤い薔薇」を検索した。

 ひとつひとつ写真を見ながら、捜してみた。

 素晴らしい形をした薔薇があった。

 薔薇らしくない、薔薇もあった。

 

 結論、庭で咲く赤い薔薇は、「アレックス レッド」であることに、行き着いた。



    青春は 我が想い出の 玉手箱

            開けても開けても まだ消えはせず

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