風よ伝えて(爺さんのブラジル)第556段

5年

 故郷、日本を離れ5年が過ぎた。

 伯と2人で、バザールやカラオケ大会、フェスタへの出店のために、食品を作る。

 そして、出店。

 工場の改装、朝4時からの餅つくり・・・・・

 それは、5年前、ブrジルへの移住の目的を成就させるための手段なんです。

 

 ブラジルでの目的は、1つだけなのです。

 今、その目的・・・・・絆・・・・・暖かく感じている。

 幸せである。

 いつまでも・・・・・・・そうありたい!

 5年前に、心に決めたこと・・・・・


 【風よ伝えて(爺さんのブラジル移住)第2段 故郷をあとに】

 

  想い出を心に風まかせ、女房と2人して、日本を離れる。

 平成25年4月23日。

深夜の関西国際空港からドバイ経由で、ブラジルのクンビッカ空港(グラルーリョス空港)までの、長い時間のフライトがもうすぐ始まる。

 お世話になった方々、幼馴染、学生時代の友達、若かりし頃の私のマドンナ、そして兄と妹に、お礼の言葉と、移住先の住所を知らせる葉書を空港のポストに投函した。

 少しだけ、手の震えを感じながら・・・。

「お世話になりました・・。」

「ありがとう・・。」

「行ってきます・・。」と心の底で呟いた。

 「ああ、いつかまた会える、きっと会える。」と心に言い聞かせつつ・・・。

 広々とし、人もまばらで、静かな深夜の空港の片隅、女房と2人で椅子に座っていた。

緊張しながら、フライトの時間になるのを待った。

 特に話す話題もなかった。

会話はとぎれとぎれで、すぐに沈黙がやってきた。

 何もすることはない。

ただ想い出が、ゆっくりと、ゆっくりと心を巡り、通り過ぎて行った。

あの顔、この顔、そして、美しい風景・・・。

 ・・・・・・・・・

 時が来た。

 同乗する客に紛れ、女房の後に並び機内に入った。

ざわつきが止み、フライトの準備が終わった。

そして、フライトは始まった。

 モニターに映し出される離陸の映像が、私の揺れ動く心の緊張感を、増幅させた。

 深夜であるが、眠ることが出来ないでいた。

 隣の席の女房は、イヤーフォーンで音楽を聴いていた。

 眼を閉じ、ゆったりと・・・。

眠ってはいなかった。

飛び立ち、すでに4時間が経っていた。

 窓から地上を見ようとしても、真っ暗で、何も見えない。

故郷が、私から遥か遠く、後ろに離れ、飛んでいく。

 「さようなら、日本、桜の国、美しい国、想い出がいっぱい詰まった国よ さようなら。」

 

 いま、南の国に、2人で旅立つ。

 友よ、兄よ、妹よ。

 そして、若かりし日の私のマドンナ。

 涙は流さない・・・。

 ただ、目的を忘れずに。
 「何処に住もうと、愛おしい、女房と共に生きたいと願う。
同じ空気を吸いながら、同じ思いを抱きつつ、何時までも2人で・・・。
 大宇宙が私に声をかけ、『もう、休憩をとりなさい。』と言う時まで・・・。」
 
 この移住の目的は、ただこれだけ。
 目的は、これだけで充分。
 
 古希近し 見知らぬ国へ 旅立ちぬ
     愛しき人に 櫓をまかせつつ

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