風よ伝えて(爺さんのブラジル移住)第545段

桜の頃 あれから5年


 流れる雲よ、見てきてくれないか

 美しい国

 桜の宴を

 どうしてそんなに早く、咲いてしまうのか

 桜前線なんて、なくなってしまったのか

 竹馬の友と、毎年開かれる桜の宴

 最後に酌み交わしたコップ酒から、もう5年

 桜の頃になると、宴に行けないのが寂しく思われる

 語り合い、楽しい時を過ごしているだろう

 懐かしい

 以下、4年前にこのブログで書かせていただいたものです

 時がすぎゆきても、思いは変わらず

 

 散りゆく花びら、酒宴のなかで

 同年の「とりいぬ会」の友よりメールが届く。

 「今年も、桜の見物会を開いた。」とのこと。

 毎年、ヤンチャ坊主、オカッパ頭であった友達が集まり、酒宴を開いている。

 懐かしいかぎりである。

 場所は、高浜市「大山緑地」。

 私の母校の高浜中学校の校歌にも歌われている「大山の森」のことで、昔はこの名前で呼ばれていた。

 森には、「春日神社」と「八剣社」が祀られ、毎年10月の第1土曜日と日曜日の2日間にわたり、勇壮な「おまんと祭」が開催される場所でもある。

 私が中学2年生の時に襲来した、「伊勢湾台風」で森の樹々が倒され、それから「桜の樹」を植え始められた。

 「ソメイヨシノ」である。

 今は、見事に千本桜として、市外からも花見客が訪れる場所となっている。

 岐阜県根尾村の「淡墨桜」の子孫の3本の「淡墨桜」が植えられていて、「ソメイヨシノ」より先に咲き始める。

 

 花見客の酒宴は、森の東側から、北側に向けて、沢山のビニールシートが敷かれる。

 私達「とりいぬ会」は、西側にある会館の隣を毎年、占拠している。

 森の近くに住む政夫君が犬の散歩の途中に、この場所を毎年陣取ってくれていた。

 

 昼12時の開催であるが、バーベキューということで、早々に準備にかかる。

 毎年、時間が来る前に、すでにビールのプルトップを開ける音がしていた。

 だんだんと集まりかけ、賑やかになっていく。

 久しぶりに会う友。

 昔の想い出、そして、今の事。

 「ちょっと、腰がいたくてねえ・・・。」など、たわいない会話の中、冗談も交え笑いが途切れない。

 酔いもあり、言葉は弾んでいた。

 或る年の酒宴の事。

 風が強く、紙コップを空にすると、風で紙コップが飛んで行ってしまう。

 酒を入れて置きっぱなしであった。

 花吹雪・・・。

 沢山の散りゆく花びら・・・。

 酒に酔い、花吹雪に酔いしれ仰ぎ見る桜。

 ひとひらのはなびらが、私の紙コップに舞い落ち酒に浮かんだ。

 見ていると、ゆっくり、ゆっくり、ゆらゆらと廻っている・・・。

 酔いの中、浮かんだはなびらが美味しそう。

 酒と一緒に口に含んだ。

 味もないまま、飲みほした。

 「桜が私になったのか、私が桜になったのか。」

 酔いのなか、酔いのなか・・・。

 そして、昨年の酒宴。

 この酒宴を最後に、ブラジルへ行こう。

 そう決めていた。

 誰にもブラジルに移住することは言っていなかった。

 誰にも言わずにブラジルに行こうと決めていた。

 関西国際空港で、移住の知らせを出せばよいと考えていた。

 大げさにしたくはなかった。

 満開の桜のもとで、友と楽しく酒を、酌み交わした。

 友と交す最後の花見酒、心に沁みていた。

 「お開きよ・・・。」

 「ありがとね・・・。」

 私は、そう声をかけ、帰路についた。

 森の中、1人で帰る私の後を追っかけてきた!

 「おい!みっちゃん!つめてーぞ!」

 高校時代に良く一緒に遊んだ磯田君だった。

 もう1人、富子さんであった。

 「なんにも言わずに、外国に行くんだってな。

 ちょっと、そこらで飲み直そう。」

 私は、泣けた。

 私の記憶はここまで。

 あとは、泣き続けたようだ。

 そして、ブラジルへ行くことを話したようだ。

 記憶にない。

 ただ、何処か居酒屋で飲み直し、富子さんをタクシーで送り、東浦のアパートに帰った。

 帰っても泣けてきて、伯に笑われたことは憶えている。

 その涙は、友との別れの寂しさと、友の心の優しさへの「ありがとう」の涙であった。

 「友よ!ありがとう!」は今も私の心に残っている。

 でも、私の記憶は何処へ・・・。

 きっと、爽やかな風に包まれて、花吹雪と一緒に、何処か素晴らしい処に行ってしまったのだろう。

 この友の心は、忘れることはない。

 桜の宴、我が友へ

 陽は西に 沈みゆきたり 夕映えの

 山並み超えたる 美しき

 桜の国が 朝迎え

 清らな風よ 友を起こせよ

 語りしは 花宴なり

 気心知れた たわいない

 言葉は浮かれ 酔いしれて

 散りゆく桜 コップ酒

 涼しき風よ 友と語らん

 友が今 ここにあるのは

 心の中の 我が胸の

 奥にあるのは 懐かしき

 とわに消えぬは 思い出の

 笑顔は散らぬ 花となるべし

     

 ※友との最後の酒宴の2週間くらい前に、同年の洋一君から電話で、夏の一箔旅行の相談をしたいと言ってきたので、進一君と強二君を誘いあい、4人で師崎港まで行き、昼食をした。

 私に例年通り一泊旅行の会計をして欲しいとのことであったが、ブラジルに行くことを決めていて、しかも、誰にも言わない方が良いとも決めていた。

 「4月、外国に移住する予定だ。」と話した。

 私の娘が、アメリカに住んでいることは、3人は知っていた。

 3人とも、私が娘のところに行くと先入観を持ち、事は終わった。

 ブラジル行きは、話さなくて済んだのだった。

 ところが、最後の酒宴が終わって、磯田君が私を追ってきたのは、席を後にした其の後で、師崎で話した内の1人が、「外国行き」を話したのだと思っている。

 それで、追っかけてきたのだ。

 やっぱり、話おったか・・・。

 と、いうことだ。

 でも、有難い想い出を作ってくれて、感謝している。

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